中学生の従妹と、海の見える喫茶店で。   ツカサ(MF文庫J)



過去と現在―――海の見える喫茶店を舞台にした、大人と子供の恋模様。
大枠としては年の差ラブコメでしょうか。ままならぬ現実に悩む主人公とヒロインたちが
交流と葛藤を積み重ねていくことで、前向きに未来へと歩き出す姿が描かれています。
年の差のほうは大学生(男)と中学生(女)なのでそこまでのアウト感はないんですけどね。
あと、タイトルや絵、田舎の喫茶店が舞台という点から、ほのぼのとした話になるのかなと思いきや
所々で結構重いというか、暗い部分がサラッと描写されていたりするのが良くも悪くも意外な印象。
ラブコメ面はメインヒロインの唯奈への恋心を自覚し、二度目の恋に落ちた主人公ですが、さて。

主人公は東京にある美術大学に進学したものの、都会での生活で自らの限界を迎え、熱を失い
大学三年の夏休みに、亡くなった親戚の葬儀のため逃げるように海沿いの田舎町・七登町へ辿り着き
幼き頃の思い出が残る喫茶アザレアで中学生の従妹・九谷唯奈とともに夏を過ごすことになった青年。
落ち着いた性格で責任感が強く、東京の生活で夢破れたことから己の分を弁えている。
大学ではゼミの先輩にすすめられてホストとして働いていて、喋りは流暢で女慣れしており
また、時折無意識に女性を褒める言葉が出てきたりと、ホストムーブが身体に染みついていたりも。
唯奈の母であり、自身の叔母である玲美が初恋の人で、ずっとそれを引き摺っていた。

ヒロインは天真爛漫な従妹、勝気な幼馴染、明朗快活なスポーツ娘、小心者なバイト娘。
一番のお気に入りは脱ニートのために喫茶アザレアで働くことになった十八歳、星乃陽菜実。
背が高くスタイルも良い、日本人形のように切り揃えた黒髪(主人公が切った)の美少女。
高校を中退し、現在は祖父のもとで療養中。そこに原因があるのか、自分に自信を持っていないが
家事全般は一通りでき、仕事の呑み込みも早かったりとスペックは低くない。

現時点(一巻)においての評価はC。
ライトノベルではまず見ない「主人公がホストをやっている」という設定が上手く使われている作品。
当然彼は女性の扱いが上手く、誉め言葉もサラッと吐くわけですが、ホストというだけで説得力があり過ぎる。
こんなナチュラルに女を誑す男を田舎の純朴な女の子に関わらせるとか、ダメ、絶対w
まあ、ヒロイン側、特に直接的に助けられることになる唯奈からすれば王子様そのものなのでしょうが。
内容のほうは、読み味に重さこそあるものの、読後感は爽やかなのでスイスイ読めます。
一巻ラストのタイトル回収までの流れの美しさも申し分なし。
本筋は来年の春まで中学生の従妹と、海の見える喫茶店で働くことを決めた主人公ですが…?