隣の席の元アイドルは、俺のプロデュースがないと生きていけない
海月くらげ(富士見ファンタジア文庫)
アイドルだった同級生との、再出発と青春の物語。
大枠としてはリア充指南もの系の学園ラブコメになると思われますが、その方向性は結構変則的です。
指南というか、お世話をされる側の香澄ミルがリア充の極み(元アイドル)のような立ち位置なのに
それをわざわざ普通の高校生の日常生活に適応させようって話になっているわけですからね。
ただ、お世話する側の主人公は主人公で人生オール80点という高スペックマンなのに、それゆえに冷めていて
だからこそ光り輝いているミルに影響されて熱くなっていく、という流れは実に青春っぽくてグッド。
ラストは主人公なしでは生きられなくなった隣の席の元アイドル・香澄ミルと結ばれ、ハッピーエンド。
主人公は元トップアイドルである香澄ミルの世話を任されてしまった高校生の少年。
良く言えば落ち着きがありクール、悪く言えば冷めていて自己肯定感が低い性格をしており
成績は学年十位以内、運動も何のスポーツでも大体できる、人付き合いもそこそことスペックは高いが
ふんわり物を好きになっては、いつのまにかついていけなくなって自分から捨ててしまうを繰り返しており
それゆえに、やりたいことも、なりたいこともないがゆえに夢中になれる何かを探し続けている。
幼少期から綺麗なお姉さんである冬華に散々絡まれていたため、美少女に対する耐性は高い。
ヒロインはキラキラな元アイドル、幼馴染なアイドル、アイドルオタクな委員長。
一番のお気に入りはミルと同じグループだった現役アイドルにして三つ年上の幼馴染、白樺冬華。
腰まで伸びた艶やかな銀髪に、大きな深い青色の目。スラリと細い身体なのに、出るところはしっかり出ている
神体型のスタイル。そして、目元にある泣き黒子の色っぽさが特徴的な、綺麗なお姉さん代表のような美少女。
面倒見がよく、少し天然でおっとりとしているが、実際は泣き虫で、練習しないと不安になる性格。
ダンスや歌、人と話すことも苦手と、アイドルとしての能力は全部平均点以下だが、一生懸命さが売りで
その原動力はすべて主人公のためであり、大好きな彼の憧れのお姉さんでい続けたいがゆえ。
小さい頃彼と交わした約束を支えに生きており、彼以外の誰に好かれても意味がないと考えている。
評価はC。
推薦文にもありましたが、ヒロイン全員の想いが超重い…!
あらすじを見る限りコメディ色が濃いのかなと思っていましたが、そんなことはありませんでした。
いや、コミカルさがないわけではないのですが、それ以上にキャラたちの内面のドロドロ感が凄い。
アイドルという要素がありながらも、否、むしろだからこそなのか、キラキラなだけではなく
悩み、傷つき、それでも前に進んでいくという良い意味での青春の面倒くささがしっかりと描かれていたかと。
本筋は主人公とヒロイン三人がそれぞれの道を見つけ、前に向かって進みだすまでしっかりと描かれており
負けヒロイン二名もきちんと自分の想いに決着をつけていたので読後感は爽やかでした。
まあ、客観的には幼馴染も委員長も長年想い続けた男の子をポッと出の元アイドルにとられた形になるので
不憫であるのは間違いないのですが。冬華なんて主役回すらもらえずおまけ扱いで浄化されましたし…