魔王様、憎き聖女のペットに転生する   猫又ぬこ(講談社ラノベ文庫)



憎き聖女の飼い猫となった魔王様が可愛さを武器に再起を目指す、愛され系ファンタジーストーリー。
主人公は魔王であり、目的は逆襲ということでダーク&シリアス色がそれなりに濃いのだろうな。
と、思っていたら「まったくそんなことはなかった」の一言な作品。むしろコミカル色が圧倒的です。
まあ、転生先の身体が可愛い猫って時点でもうコメディにしかなりようがないですしね…
しかも何を血迷ったか、主人公の出した結論が「自身の可愛さによる侵略」というトンデモ展開なわけで。
陰鬱な策謀劇も、血沸き肉躍るバトルも存在しない、可愛さとほのぼのに包まれた物語を堪能すべし。
ラブコメ面はメインヒロインのアイリーンが主人公(第一形態)に好意を抱いたようですが、さて。

主人公は魔界統一後、人類が暮らす世界を侵略するも、最後は聖女アイリーンとの一騎打ちに敗北。
その後、転生魔法によって生き返るが、その姿はか弱いフェアリーキャットだった魔王。
尊大でプライドが高く、負けず嫌いな性格だが、正々堂々を好み、卑怯卑劣をよしとしない。
また、臣下に優しく寛大で、人間世界への侵攻も食糧難の解決のためであったり
魔界統一後、最初に戦争孤児の保護を行い、子供たちの父になったりと、魔族の王としての器は大きい。

ヒロインはクールな聖女、ネクロマンサーな義娘。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
荒廃した魔界を救う為という大義名分があるとはいえ、侵略を行った主人公は決して善ではないのですが
すぐ傍に復讐対象がいるのに確殺可能な不意打ちをしなかったりと、変なプライドの高さを見せたり
果てには可愛さを武器にすることを決意したりと、憎めないキャラをしているのが面白いですね。
普段は凛としているのに、彼の可愛らしさにやられてデレデレな聖女アイリーンのギャップ可愛さもグッド。
悪(人類から見て)の魔王が主人公なのに、作品に漂う雰囲気は癒し系全開という意外性がとにかく素敵です。
本筋は魔王軍の大幹部(全員小動物に転生した)たちが集結し、魔王軍再建への誓いを新たに。