初恋だった同級生が家族になってから、幼馴染がやけに甘えてくる
                                              弥生志郎(講談社ラノベ文庫)



尽くしたがりな同級生×甘え上手な幼馴染。ヒロインレースしないダブルヒロインラブコメストーリー。
大枠としては三角関係が主題になっているラブコメですが、一風変わっているのは開始時点で既に
ヒロインレースが決着、というか勝てないほうが決まっているという点ですね。
何せ片方は母親違いの姉なので、法律&倫理上の問題でどう足掻いても結ばれないわけで…
だからといって、じゃあもう片方(幼馴染)の大勝利で終わりですねはい終了! ともいかない。
何故なら、主人公の初恋は姉であり、つい最近までは血の繋がりを知らなかったのだから。
しかも、そんな相手といきなり同居することになるとか、そう簡単に割り切れるはずがないですからね。
ラストは、初恋だった少女は家族に、幼馴染だった少女は彼女となって新しい日々へエンド。

主人公はある日突然、初恋の相手である日向が異母姉であることを知ってしまった少年。
真面目で一途な性格で、他人に対しては世話焼きだが、自分に対してはいい加減なところがある。
自分の境遇を悲観せず、いつだって笑顔で優しかった母親が人生の目標で、憧れの人。
父子家庭で育ち、物語開始時点まで一人暮らしをしていたため、家事は一通りできるが
必要最低限の生活能力さえあれば十分で、できるだけ手を抜いて生きていたいと考えている。

ヒロインは才色兼備な異母姉、クールな幼馴染。サブに生意気な後輩。
一番のお気に入りは周囲から「月の天使」と呼ばれている猫好きな主人公の幼馴染、小夜月乃。
肩に届かない程度の透き通るような綺麗な髪、神秘的な輝きをたたえた宝石のような瞳の
感情の読めない透明な無表情がトレードマークな、まるで精緻な西洋人形のような美少女。
一見すると、無表情+感情表現の乏しさ(下手さ)による不愛想が平常運転であることから
学校ではクールキャラで通っているが、実際は生活能力が皆無で、主人公無しではまともに生活できない。
また、素は人見知りであり、マイペースで猫みたいに自由気ままな性格をしている。
その一方で、恋をしたらどこまでも一途で、好きな異性に対しては無邪気なくらいに甘えたりも。

評価はC。
初恋の人と同居生活をおくることになった上、隣に住む幼馴染からは愛の告白をされる。
ここだけ切り取って見ると、主人公は羨ましい奴だなぁの一言なんですが…
初恋を断ち切ることができない、という前提条件があると途端に同情の念がわいてしまいます。
ヒロイン両方との距離が近すぎるというのもツライところ。落ち着く暇がないですからねぇ。
そして更に悲惨なのは、異母姉の日向も彼のことを好いていて、実は両片思いだったという点。
主人公が告白を決行する前に異母姉弟ということが判明したのはある意味で救いだったのでしょうが
当人たちにとっては全然救いになっていないですしね。二人の心情を考えると切なすぎる…
なんの制約のないもう一人のヒロインである月乃にしても、卑しさのなさが眩しすぎですし。
本筋は順当に幼馴染が恋人に選ばれ、姉になった初恋の少女は振られ、という形に納まったわけですが
では後者が負けヒロインなのかというとそうではなく、好意のベクトルが違うだけで同じくらい好き。
と、欺瞞全開・言葉遊びなだけではあるものの、三人ともが納得できるオチになっていたのはグッド。