喋らない来栖さん、心の中はスキでいっぱい。   紫ユウ(角川スニーカー文庫)



甘くてクスッと笑えてあったかい、特別なふたりの日常ラブコメストーリー。
大枠としては学園ラブコメですね。唯一のファンタジー要素として、主人公が読心能力を持っているのが特徴。
読心というと、異能がメインのバトルものでは強敵が使用する能力として有名どころのひとつなわけですが
平和な日常系ラブコメにおいてもこれは正に反則の一言。しかもそれを主人公が有しているとなると…
ツンデレや無口といった、内心が読みにくい系のヒロインとのすれ違いが発生しないのは強すぎである。
そうでなくても立ち回りが有利になるのは間違いないですし。苦労があるのも確かでしょうけども。
ラブコメ面は主人公が恋愛に予防線を張っていることもあり、今のところ進展なし。
彼を落とさんと日々頑張ったり、改めて本格参戦を決意したりとヒロイン側には動きがありますが…

主人公は他人の心の声が聞こえる体質で、トラブル無縁生活のためにそつなく立ち回れてしまう少年。
達観した性格だが、他人の「助けて」という心の声を聞くと、助けずにはいられなくなってしまう。
期待されている通りに動いて、人間関係を円滑にする、が信条。
優しく、勉強やスポーツもできて、誰にでも分け隔てなく接することができることから、女子人気が高いが
色恋沙汰は面倒事しか生まないと思っているがゆえに、彼女がいると嘘を公言している。
心が読めて相手の本当の人物像がわかってしまうがために、偽りのない「本物」に弱い。
能力のせいもあって人が多いのが苦手で、森林浴や河川敷などの広い場所を散歩するのが好き。

ヒロインは無口な転校生、姉御肌な級友、腹黒な完璧娘。サブに友達想いな級友。
一番のお気に入りは生徒会役員を務める実は腹黒なクラスメイト、雛森さくら。
黒く大きな瞳に、腰に届くほど長い、黒く艶やかな髪の、日本古来の大和撫子を彷彿とさせる美少女。
外面は品行方正、純真無垢、純情可憐、才色兼備、お高くとまってお淑やかな完璧美人だが
それは演技なだけであり、内面は負けず嫌いで自分への自信が強く、我侭で腹黒と裏表が激しい。
ただ、素は結構甘えん坊で寂しがり屋、そして前向きで一生懸命な頑張り屋だったりと悪人ではない。
自信家ゆえに自分から攻めるのは得意だが、反撃や予想外な行動をとる人物には極端に弱く
学校では自分になびかない主人公を振り向かそうと奔走しているが、いつも軽くあしらわれてしまっている。

現時点(三巻)においての評価はC。
外面がツンツンしていたり、冷淡だったりと、普段は拒絶反応を示しているように見えるヒロインが
実は内心では可愛さ全開だったら? そしてそれを本人に知られずに読み取ることができたなら?
そりゃニヤニヤするしかないですよね、全部わかってしまう読者や主人公からすれば!
内容自体は人気者な主人公がぼっちなヒロインに友達作りの指導をするという構成になっていますが
そこに読心能力というひとつまみの不思議があることで、萌え度が爆上がりしています。
キャラに関しては、読心能力のこともあって無理しがちながらもコミュ強な主人公が実に頼もしい。
ヒロイン側も来栖さんを筆頭に良い娘揃いで、とにかく見ていて微笑ましいのがグッド。
本筋は来栖さんや主人公の過去が徐々に明らかになる中、他ヒロインたちとの仲も深まっていき…?