英雄支配のダークロード 羽田遼亮(GA文庫)
愚者と蔑まれる稀代の天才魔王と、負け組英雄たちの異世界改革譚。
大枠としては戦記ものですね。と言っても、アルカナという「タロット」になぞらえた二十二人の魔王が
召喚した英雄を従え覇を競い合うという騒乱の世界が舞台なので、ファンタジー感も濃いですが。
あと、特徴的なのは主人公の味方となる英雄が「ジャンヌ・ダルク」「源義経」「明智光秀」といった
歴史上における負け組ばかりという点でしょうか。まあ、負け組=無能とは限らないですし
実際、主人公側の英雄は有能っぷりをこれでもかと見せつけてくれるので爽快感は抜群。
ただまあ、そのせいで敵側の英雄の一部がショボく見えたり、使い捨てになっているのはマイナス点ですが。
過去の偉人を使う以上はモブ扱いせず、ちゃんと全員に英雄らしい見せ場を用意してほしかった…
ラブコメ面は主人公が死した大聖女一筋と、他ヒロインが割り込む余地はなさそうですが、さて。
主人公は敗者の烙印を押された英雄たちを従え、最弱と蔑まれてきた愚者の魔王。
落ち着きがあり、忍耐強い性格で、知力・武力共に一流、品行方正で仁愛も兼ね備えている。
必要なものを必要に揃えるという哲学を持っており、良く言えば質実剛健、悪く言えばケチ。
人材招集においては「ランクの低い負け組英雄を集めたい」という考え方。
百年前、自身を変えてくれた大聖女を今でも愛しており、とある魔王に殺された彼女の魂を煉獄から救い出し
彼女が望んでいた五族協和を為すことを目的とし、そのために生き、戦っている。
ヒロインは献身的なメイド、淫乱な聖女。サブに腹ペコ猛将、義に厚い剣豪。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(二巻)においての評価はC。
きちんと英雄の史実を活用している描写があるのは歴史ファンとしては嬉しいところですし
それでこそ過去の偉人を使う意味があるわけですが、それが基本味方側ばかりに適用されているのが残念。
まあ、いくら英雄が凄くても、彼らを使う側である魔王が優れていないと意味がない。
だから主人公は凄いんだ! ということなのかもですが。実際君主としては有能ですしね彼。
日本史上もっとも有名な裏切り者であろう明智光秀をも心酔させていますし。
本筋は魔王を四人撃破し、順調に自勢力を大きくしていく主人公ですが…?