ルーン帝国中興記   あわむら赤光(GA文庫)



己の真価を発揮させ、適材適所に響き合う三英雄共鳴のシャッフル戦記。
大枠としては戦記ものですね。特徴は主人公が三人いて、各人が立場を入れ替えるという点。
商人は皇帝に、皇帝は将軍に、将軍は商人に。それぞれが新たに得た立場で己の真価を発揮させ
適材適所という言葉を体現し、滅びかけの祖国を大復活させていく様は爽快感抜群。
一人だけ入れ替わった先での仕事以外のこと(商人なのに必殺仕事人してる)が目立っていますが
まあこれはこれで面白いですし、国の為になっているのも確かなので問題なしということで。
ラブコメ面は三者三様のスタンスでそれぞれのヒロインたちと接している模様。

主人公(他に二名いるが、一巻表紙にいた彼を便宜上メインと解釈する)は帝都有数の大商会の
若き当主だったが、ハ・ルーン帝国の皇帝ユーリフェルトと入れ替わって皇帝となった青年。
くすんだ緑髪に、愛敬はあるけれど冴えない風貌の二十三歳。
普段は人懐っこくも軽薄で調子に乗りやすい、頼りないちゃらんぽらんなダメ男そのものだが
その本性は思慮深く抜け目のないキレ者であり、商人らしく洞察力や記憶力に優れ、折衝事も得意。
色恋に関しては、悪友と妓楼通いをするくらいには雄であり、女慣れもしている。

ヒロインは生真面目な秘書官、苦労人な秘書官、陽気な商人。サブに気丈な娼婦、ドワーフ聖女。
一番のお気に入りは帝国首席秘書官を務め、皇帝代理となった主人公を支えるダークエルフ、ミレニア。
キツめの凛々しい顔立ち、蠱惑的な褐色の肌、プラチナブロンドの髪、そして長く尖った耳が特徴の巨乳美人。
真面目で気が強く、職務に対して誠実な性格だが、認めた者には柔らかい雰囲気になる。

現時点(二巻)においての評価はC。
「だったらおまえが代わってみろ!」というアホらしい叫びから始まる前代未聞の戦記。
国の重職三人が入れ替わりとか、本人たちが望んだことであってもそれは無理無茶無謀なのでは?
という懸念を清々しく吹き飛ばす適材適所無双っぷりが実に痛快。
立場の違うそっくりさんな人間同士が入れ替わる、というネタは珍しくはないですが
この作品の場合は全員見た目は普通に別人(当作品は魔法でその点を解決している)ですし
全員が拒否権なしの強制や巻き込まれではなく、納得して国のために入れ替わっているというのが新鮮。
本筋は多大な被害を出しつつも、敵国を撃退し重要な都市を取り返したハ・ルーン帝国ですが、さて。