灰原くんの強くて青春ニューゲーム   雨宮和希(HJ文庫)



無自覚ハイスペック青年が二度目の青春をリアルにやり直す、強くてニューゲーム学園ラブコメストーリー。
大枠としてはタイムリープものですね。と言っても、別に悲劇や誰かの死の回避といった深刻な目的はなく
後悔しかなかった高校生活の「やり直し」だけが主人公の目的になっています。
なので、タイムリープという要素はあくまで主人公がリア充な青春をおくるための切欠、というだけであり
重い背景や厳しいペナルティなどは存在しないため、気楽に読み進めることができます。
ラブコメ面は恋人となった星宮陽花里と順調に交際中。

主人公は高校デビューに失敗し、灰色の高校時代を経て大学四年という社会人目前となったある日
突然七年前、すなわち高校入学一ヶ月前まで時を遡っていた青年。
一周目では調子に乗って空気を読めていない言動ばかりしていたがゆえに灰色の青春をおくる羽目になり
それゆえに、良く言えば謙虚、悪く言えば自己肯定感が低いところが目立ち、他者の想いに鈍感。
二周目では陽キャを装ってはいるものの、根が陰キャオタクであるため、素のコミュ力は低い。
また、思考の海に潜るとなかなか戻ってこられない悪癖がある。
特技は料理(大学時代に一人暮らしをしていた頃、暇だったから極めた)とカラオケ(ヒトカラで鍛えた)
星宮陽花里に惚れていた一周目では、彼女に告白をするもフラれている。

ヒロインは学園のアイドル、協力者な幼馴染、ムードメーカーな元気娘、凛とした級友、マイペースなギャル。
一番のお気に入りは星宮陽花里の幼馴染兼保護者な級友、七瀬唯乃。
切れ長の瞳に高い鼻、シミひとつない白い肌、女子にしては高い背丈、細くて長い脚が魅力的な美少女。
成績優秀、書道・茶道・ピアノをそつなくこなすなど、絵に描いたようなクール系大和撫子だが
私服が可愛い系であったり、アイドルが好きであったり、料理ができなかったりと、中身は普通の女の子。
喫茶店でアルバイトをしており、後々彼女の紹介で主人公は同僚になる。

現時点(八巻)においての評価はC。
後悔しかなかった過去をやり直したい。そんな誰もが思い、しかし叶わない望みを実際に叶えてしまった青年が
今度こそ後悔を残さぬよう二度目の人生に全力で挑んでいく。というのが本作品の流れなわけですが…
話の方向性と主人公の動機がわかりやすく共感全開なだけに、とても感情移入しやすいです。
肝心の主人公にしても、自発的な努力(肉体改造や身嗜みの向上等)で、ちゃんと入学までに準備を整え
過去の経験もしっかり糧にしているので好感を持てますし、これならばリア充化も納得の一言。
虹色の青春になったがゆえの問題、という山場の作り方と解決方法も良い感じですし。
あとはなんといってもヒロイン陣の可愛らしさ、それ以上に良い子さが眩しすぎる……!
本筋は女友達の悩みを解決し、自身は本気のバンド活動へ。そして少年少女たちは二年生に。