友人に500円貸したら借金のカタに妹をよこしてきたのだけれど、
俺は一体どうすればいいんだろう
                         ねぶくろ(ファミ通文庫)



ぐいぐい来る美少女とのワンルームドキドキ同棲生活物語。
大枠としては同居もののラブコメですね。一風変わっているのは同居の理由でしょうか。
この手の作品は、親同士が決めた許嫁だから、とか、事情があって家に帰れないヒロインを見かねて。
というのがお約束ですが、この作品の場合はタイトル通り借金が同居理由となっています。
とはいえ、その額はたった500円ですし、年頃の男女二人が同居する理由としては弱すぎるわけで…
もうこの時点で借金は単なる口実にすぎず、メインヒロインの宮前朱莉自身が彼の元で暮らしたい。
すなわち、好意があるから同居することで心身共にお近づきになりたいというのが明白なんですね。
このヒロイン、まだJKなのに積極的にもほどがあるというか、思い切りが良すぎである。
ラストは大学生となり、隣の部屋に引っ越してきた恋人の朱莉とこれからも一緒の時間を生きていくエンド。

主人公は夏休みに友人である宮前昴に貸した500円のカタとして自宅にやってきた
彼の妹である宮前朱莉と同居することになってしまった大学一年生の青年。
押しに弱いところこそあるものの、物腰穏やかで誠実な性格で、人の心にスルッと入り込むタイプ。
顔の造形はいいほうで性格も良好なため、女子の友達はそれなりにいたし無自覚にモテてもいたのだが
色恋には草食系かつ鈍感であったため、告白したこともされたこともない。

ヒロインは健気な友人の妹。サブにフランクな従姉、マイペースな妹分。
一番のお気に入りは強引な理論で主人公の家に泊まり込むようになった友人の妹、宮前朱莉。
絹のような黒髪、ぱっちりと形の良い瞳、すらっとした鼻立ちの、文句のつけようがない美少女。
人見知りしない、明るく素直で真面目な性格のしっかり者と評判だが、割とポンコツなところも。
その美少女っぷりは学校中で話題になるほどで、男女問わずファンがいるのだが
当の本人は小学四年生の夏に出会って好きになった主人公一筋であり、思い込んだら一直線。

評価はC。
正に文字通りの押しかけ女房である朱莉の恋する乙女パワーが凄い作品。
いくら好きな人のためとはいえ、ひとり暮らしの男の家に強引に泊まり込むとかこの娘、捨身過ぎである。
いや、勿論無防備な自分に対して主人公は変なことはしてこないと信用していたのでしょうし
仮に手を出されたとしてもそれはそれでOKというスタンスっぽいので無問題なのでしょうが。
彼女の視点もきちんと用意されているので、その恋心の大きさもよくわかりますしね。
これなら鈍感さと紳士っぷりを主人公が発揮していても仕方なし。でないとすぐに決着してしまいますし。
本筋は軽いすれ違いこそあれど、恋人として円満に幸せな日々を送る二人の姿が描かれての完結と
少し起伏に欠ける点こそあるものの、オンリーヒロインもののラブコメとしては素敵な作品に仕上がっていたかと。