勇者、辞めます。 クオンタム(富士見ファンタジア文庫)
役目を終えた引退勇者の最後のひと仕事。魔王軍立て直しファンタジーストーリー。
大枠としては勇者と魔王ものですね。勇者が魔王に勝利し、平和になった世界が舞台になっています。
ちなみに、主人公は人類サイドから追放されていますが、追放ざまぁ要素はなし。
内容は魔王軍の立て直しということで内政がメインになっており、主人公は戦闘チートだけではなく
古今東西のあらゆる技術に精通しあらゆる知識を身に着けている知識チートでもあるので
明快なお仕事改革物語が楽しめるかと。勿論バトルもあります。
ラストは勇者を辞めた青年は自分を救ってくれた魔王の隣で今日も生きていくのだったエンド。
ラブコメ的には進展がないまま終了。そもそも主人公、不老不死だから恋愛とか難しいですしね…
主人公はある日突如現れ、単身で魔王軍を壊滅させ世界を救うも、強すぎるがゆえに人間の国から
追放され、正体を隠して魔王軍再生のために転職した最強の(元)勇者。
その正体は遥か過去の機械文明の忘れ形見であり、人類を守る事を至上命題とする生体兵器の生き残り。
赤い瞳と黒い髪が特徴的な青年で、外見年齢は十八歳前後だが、実年齢は三千歳を超えている。
戦闘力、知識、技術、料理の腕などあらゆる面でハイスペックを誇っているが、軽薄で可愛げがなく
素直でなかったりと、一言で言えば性根がねじ曲がっているため、他者から信用されにくい。
理論と分析で生きており、それが誇りでありアイデンティティでもあり、弱点でもある。
ヒロインは誇り高き魔王、ポンコツクールな淫魔、明朗快活な獣人娘。
一番のお気に入りは魔王軍最高の魔術師にして、魔王エキドナの右腕である淫魔族、シュティーナ。
現魔王軍唯一の古参管理職で、主人公がやってくるまでは絶望的な人材不足で過労死寸前だった。
ウェーブのかかった美しい金髪に、整った顔立ちの眼鏡巨乳美人。
とことん真面目で几帳面な性格で、一見するとクールな切れ者といった感じで、頭も良いのだが
頭に血が上りやすく、かなりの心配性で想定外のトラブルに弱く、肉弾戦にも弱いなど、結構ポンコツ。
また、サキュバスであるにもかかわらず、色恋沙汰に初心で羞恥心も強い。
評価はC。
出だしはコミカル、逆に背景はシリアス度強め。しかし全体的には優しさに溢れた心暖まる人情物語。
と、緩急のある構成が読み手を物語に引き込み、スイスイと話を読み進ませてくれました。
キャラに関しては、あらゆる面で万能で頼りがいがあり、精神的にも余裕があるように見えながらも
重い過去と使命を背負い、矛盾を抱え続け、それでも足を止めない主人公が痛々しい。
だからこそ、そんな彼を仲間となった魔王軍の面々が救うという流れが実に美しく、心に染みました。
本筋は魔界の救済、人類との和平、主人公の不老不死についてなど、諸問題の完全解決はまだ遠く
そういう意味では打ち切りエンド風ではありますが、勇者を辞めた主人公が救われるまでの物語と考えれば
優しい結末でしたし、十分ハッピーエンドと評して差し支えない形の結びになっていたかと。