純白令嬢の諜報員 桜生懐(富士見ファンタジア文庫)
全知全能の暗躍で少女の破滅を「改編」する、謀略ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転生ものですね。特徴は転生先の異世界が主人公の愛読書の中であるという点。
愛読書なので当然主人公は物語の設定をすべて記憶していますし、凄腕諜報員だったのでスペックも高い。
そして、最も愛した物語の主人公(ヒロイン)が世にも凄惨な末路を辿ることを知っている。
となれば破滅の回避に動くのは熱狂的読者として当たり前。誰だってそうする私だってそうする。
物語を楽しむ人間ならば誰もが一度は考えたがあるであろう「作中における悲劇の回避」という名のIF物語。
ありえなかったハッピーエンドのために己の知識と能力を縦横無尽に発揮する主人公の姿が実に痛快です。
ラブコメ面は今のところ進展なしというか、この主人公は自発的には恋愛とかしないよね絶対。
主人公は愛読書「薄幸のロザリンド」の作中に転生した某国最高峰の諜報員の青年。
破壊工作や革命の先導、暗殺、要人警護、影武者など、あらゆる任務を成功させてきた実績の持ち主。
容姿・声・所作・礼儀作法・気遣い・料理の腕。どれをとっても非の打ちどころがない。
生まれてから「薄幸のロザリンド」に出会うまで、感情らしい感情抱いたことがなく
人を騙し利用することに良心の呵責を覚えず、人を殺すことへの躊躇すらない非人道的な人間だが
自分に初めて感情を教えてくれたロザリンドに対しては無償の愛と究極の奉仕の心を捧げており
彼女を幸せにするためであればいかなる労苦も厭わず、またあらゆる手段を問わない。
ヒロインは薄幸の令嬢、妹分な弟子。サブに最狂の猟犬や聡明な王女なども。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(二巻)においての評価はC。
愛読書のバッドエンドを自らの手で覆す。現実では二次創作以外でそれを成す手段はありませんが
この作品の主人公は転生という形でリアルになった物語そのものに介入できる権利を得たわけなんですよね。
それだけなら羨ましいの一言なのですが、介入する物語が悲劇であればあるほど改編は困難なのも確か。
無力な人間が物語の世界に転生したとしても、大体はどうにもならないまま終わるでしょうしね。
だからこそ、原作知識のみならず、諜報員として磨き上げた技術をも存分に駆使する主人公の姿が格好いい。
いや本当、主人公の行動力が凄すぎる。貴族の家に使用人として潜入の時点で原作知識だけじゃ無理ですし…
加えて、好きなキャラの前ではバカになるところも愛嬌があります。その気持ちもわかりますしねw
彼が愛する二人のヒロインも可愛いですし、是非彼女たちには幸せになってもらいたい。
本筋は原作順守思考の転生者との対決を制すも、致命傷を負ってしまった主人公ですが…?