いずれ水帝と呼ばれる少年   かたなかじ(角川スニーカー文庫)



最弱の水魔法で最強の「水帝」に成り上がる、異世界成り上がりファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転生+劣等と蔑まれている力を持つ主人公が周囲を見返していく成り上がりものです。
この物語の世界観における劣等要素は「水魔法」なのですが、これが中々に珍しい。
水魔法というと、属性としてはメジャーな火、光、風、雷には及ばずとも、土よりは登場頻度が高いですし
ほとんどの物語では治癒魔法として大活躍したりと、なくてはならない扱いになっているのが主。
勿論、攻撃魔法としても、水の質量を考えると決して弱くはないですし、人体の構成要素を踏まえると
応用次第では凶悪な威力を発揮しますしね。逆を言えば、知識と発想が大事な属性でもあるのですが。
そしてこの作品の主人公は転生者ゆえにその両方に恵まれているから強くなることに納得しかないわけで。
ラブコメ面は今のところ進展なし。

主人公は劣等属性の水魔法の適性を持っていたため、転生先の火魔法の名家ウィリアム家に生まれて
間もなく離れの塔の牢に幽閉されてしまうも、へこたれず我流で水魔法を研鑽し続けた少年。
転生者ということもあり、落ち着きがあり大人びているが、転生した家で酷い扱いだったがゆえに
大切に思う者以外のことは比較的どうでもいいと思い、不遜な態度をとりがちなところがある。
転生した際に、何があっても心を強く生きられるようにと、女神によって精神強化がされており
それゆえに、驚くことなどはあっても、精神にダメージを受けたり、心が折れることはない。
水魔法が劣っているという認識を全て変えるため、水の九大魔導最高位「水帝」を目指している。

ヒロインは純朴なエルフ、純粋な教会騎士。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(一巻)においての評価はC。
攻撃魔法としては純粋な威力で他属性に劣りがちなゆえに応用力が命とも言える水魔法。
その万能ともいえる多種多様性を活かした魔法バトルが実に見応え十分で面白い。
転生者ゆえの知識と発想+水魔法だけに特化した長年の研鑽+世界有数の実力者への師事という
主人公が本編スタート時において強者である説得力も申し分ないですし、爽快感は抜群。
普段はどこか達観としながらも、水魔法で頂点を極めんとする情熱を燃やす主人公も格好いいです。
本筋は魔族を撃破するなど、早速の活躍を見せる主人公ですが、順風満帆とはいかないようで…?