何と言われようとも、僕はただの宮廷司書です。   安居院晃(角川スニーカー文庫)



世界の叡智が集う魔法図書館と規格外な宮廷司書のビブリア・ファンタジー。
図書館が舞台かつ主人公が司書ということで、物騒な事件など起きない落ち着いた話になるのかな。
と、思っていたら、国家レベルの陰謀だの魔法バトルだのと、内容は結構派手だったりします。
まあ、重要書物や禁書がある図書館を一人で管理している以上、そりゃ荒事はあって当たり前なのか。
とはいえ、当作品の主人公は無敵とまではいかずとも、万能系の実力者なので安定感は申し分なし。
ラブコメ面はお互いに明言こそないものの、メインヒロインのフィオナとは相思相愛っぽい。

主人公はスネイエルス王国にある王立魔法図書館で唯一の宮廷司書を務めている少年。
出自不明の孤児で、幼少の頃にスネイエルス第三王女フィオナと出会い、王都にやってきた。
温厚で優しい性格をしており、友好的な相手には親身で誠実だが、敵対的な相手には冷酷かつ容赦なし。
身分差別を嫌っており「誰に対しても平等、且つ自分に正直に」が信条。
色恋には興味がないわけではないし、恋心を抱く相手もいるが、現状では知識欲優先。

ヒロインはお転婆な王女、頑張り屋なお嬢様。
一番のお気に入りは自身の不調を解決してくれた主人公に師事する公爵家の愛娘、シオン=ベルナール。
腰元まで伸ばされた栗色の髪に、丸みを帯びた同色の瞳。年相応の体つきで、華奢な体躯の美少女。
素直な性格で愛想がよく、色んな人から好かれるタイプだが、男を苦手にしているところがある。
箱入り娘ではあるものの、今自分にできることに全力を尽くすことができる心の強さの持ち主。

現時点(一巻)においての評価はC。
魔法図書館、という響きが、如何にもファンタジーといった感じで読む前からワクワクする作品。
魔導書と魔法の関係、魔導書の階位など、設定もしっかりしていますし、読み応えもバッチリ。
キャラに関しては、普段は穏やかな優男なのに、敵に対してはガラが悪くなる主人公がインパクト抜群。
彼の脇を固めるヒロインや友人たちも、それぞれにちゃんと役割があって話の中に無駄がないですし。
本筋は公爵令嬢シオンを巡る邪な陰謀を打ち砕き、ひとまずは一件落着。