宅録ぼっちのおれが、あの天才美少女の
ゴーストライターになるなんて。 石田灯葉(角川スニーカー文庫)
エモさあふれる、バンド×ラブコメ=最高の青春ストーリー。
大枠としては音楽制作&バンド活動をメインにした学園青春物語ですね。
音楽という共通点のもとに仲間が集い、時に意見をぶつけあったりしながら絆を深めていき
目標へと向かって邁進していく様は正に十代の若者たちの青春! といった感じで実に爽やかな読み味。
ちなみに、作中曲がYouTubeで公開されているのでそれを聞きながら読むとエモさ倍増。
ラストは学園祭ライブを大成功させ、そして少年はバンドのメジャーデビューを目指すのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの市川天音と結ばれて終了。
主人公は元天才シンガーソングライターの市川天音から秘密の相談を受け、彼女を救うことを決意。
目立つことが大嫌いであるがゆえに、ゴーストライターになった少年。
ネガティブ思考で自意識過剰なコミュ障ぼっちで、押しに弱く意気地なしな性格。
男女の色恋の機微に疎く、自分に自信がないせいか、自身に向けられる好意にも鈍感。
趣味の宅録が高じてバンドに必要な楽器は一通りでき、作曲もこなせるが作詞センスは悪い意味で独創的。
ヒロインは完璧主義な天然娘、不愛想な幼馴染、姉御肌な同級生、純粋小悪魔な同級生。
一番のお気に入りはとある事情で疎遠になった主人公の幼馴染にしてベースプレイヤー、波須沙子。
金髪ロングヘアに、切れ長の目が特徴の美少女。
普段は無表情で抑揚のない話し方をするなど不愛想さが目立つが、実は心優しい性格。
その一方で、嫉妬心の強さから、主人公に近づく女子に対しては露骨な幼馴染アピールや
彼のことは自分が一番理解していますアピールなど、マウントを取りたがるところがある。
評価はC。
そうそうこういうのがいいんだよ、バンドものとはこんな感じの青春物語であるべきなんだよ。
と、太鼓判を押したくなる、恋と友情と成長と人間ドラマと音楽が入り混じった熱く素敵な作品。
キャラに関しては、ここぞという場面で真っ直ぐに本心を伝える勇気を見せてくれる主人公がグッド。
ヒロインたちも、背景が重かったり拗らせていたり暴走しがちだったりとクセの強い面々揃いですが
それぞれの可愛らしさと個性がしっかりと描写されており、華やかさは申し分なし。
本筋は二巻完結とボリューム感こそないものの、しっかりと起承転結はできており、読後感はバッチリ。
ただ、あとがきで書かれていたように、完結巻が二冊分を一冊に凝縮されたものになっているため
ストーリー上で必要な部分だけが詰め込まれた余裕のない形になっていたのが残念だった点でしょうか。
もっとキャラの掘り下げのや日常パートの積み重ねがあれば更に面白くなっていただろうと思うと…
あと、個人的には推しヒロインである波須沙子が「幼なじみは負けフラグ」をキッチリ回収したのが切ない。