100億回転生した俺は、この世の全ての覇者となり無双する
                                           日の原裕光(富士見ファンタジア文庫)



転生を繰り返し、最弱から最強に這い上がった少年の無双学園ファンタジーストーリー。
大枠としては転生ものになりますが、転生先は同世界の過去や未来、同時代、異世界と多種多様。
と言っても本編は最後の転生がメインになっているので、それまでの転生はサラッと流されているのですが。
当然、回数を重ねれば重ねるほど記憶や経験が蓄積されるため、主人公の最強っぷりは申し分なし。
似たようなネタとして「時間が進まない空間での修行」がありますが、当作品の「転生の繰り返し」のほうが
明らかに利便性が高いですからね。何せ何度も実践のトライアンドエラーができるわけですし。
更には自身の実力の向上に加え、繰り返しで得た記憶を活用した知識のアドバンテージもあるとなれば…。
ラブコメ面は主人公がメインヒロインのシストラ一筋ではあるものの、既にその感情は恋愛を超越している模様。

主人公は親と村から捨てられてしまうも、死の間際、幼馴染の少女シストラと平和に暮らす人生を願い
しかしそれでもシストラを救えぬ100億回の転生を経て、世界最強の力を手に入れた少年。
数多の転生を繰り返して果てに、何事にも動じない、慢心も油断もないクール&ドライな性格となったが
シストラに関することに限っては感情が先立ち、特に彼女に害をなす相手には怒りを見せることも。
自分に優しくしてくれたシストラを幸せにすることが最優先の行動原理であり、その障害となる者には容赦がない。

ヒロインは無邪気な幼馴染、努力家な王女。
一番のお気に入りは「剣の舞姫」の異名を持つ、剣術に長けた王族の娘、エルデ=ロングトラスト。
やや不器用なところがありながらも真面目で努力家な性格で、王族でありながらも平民への差別意識が低い。
その剣の腕は、魔法がほとんど使えないにもかかわらず、剣術担当の教師から推薦をもらえるほど。

現時点(一巻)においての評価はC。
一口で「百億回転生した」と言うと軽く聞こえますが、その回数分だけ自身の命や大切な存在を失い続けた。
と考えると、主人公の積み重ねたものの重さと心の強さがこれでもかというほどよくわかります。
しかもその動機が「優しくしてくれた幼馴染を幸せに」その一念なのだから、ただただ尊く、そして熱い。
単純な戦闘力だけでも魔王を一蹴できる実力を持ちながら、それのみに頼ることなく、転生の中で得た多才さも
見せてくれますし、その頼もしさは正に盤石。ここまで死角がない主人公も珍しいのではないでしょうか。
ただ、それだけに何故今までの転生ではあらゆる手段を尽くしてもシストラを救えなかったのか。
という点が気になるところ。普通に考えれば万も転生を繰り返せば達成できる程度の目的のはずですし…
本筋は内側から人間の国を支配せんとしていた前魔王を撃破し、一躍有名となった主人公で素は
大魔王をはじめとして、シストラを狙うであろう脅威はまだまだ多く存在しているようで…?