嘘と詐欺と異能学園 野宮有(電撃文庫)
華麗な嘘が交錯する、究極の騙し合いエンターテインメントストーリー。
大枠としては学園異能バトルものですね。と言っても主人公は異能を持たない正真正銘の無能力者ですが。
ゆえに、綿密な下準備と策略を用いて自分は強者であると驕る敵を嵌め倒していく様は爽快感抜群。
無能力者であるがゆえにひとつのミスや不運が問答無用の敗北を招くという常に漂う緊張感もグッド。
あと、珍しいのは相棒ポジションにしてメインヒロインであるニーナも無能力者という点でしょうか。
大体この手の作品のメインヒロインというのは、素質に恵まれた天才系というのがお約束ですしね。
そういう風に装っているだけで、実は無能力者であり内心は気苦労しまくりというギャップが面白いです。
ラストは世界の命運を握る心理戦を制し、帝国の陰謀を阻止することに成功。
そして因縁の敵を倒して完全勝利を果たした詐欺師の少年と少女は次なる大仕事へ、エンド。
ラブコメ的には進展こそなかったものの、メインヒロインのニーナがずっと共犯者であり続けることは間違いなし。
主人公は無能力者であるにもかかわらず、異能者養成学校の入学試験を突破した天才詐欺師。
外見はペールオレンジの肌、無造作な黒髪、夜の色をした切れ長の目。
いつも飄々とした態度で冷静さを崩さないが、内側にある繊細な部分に触れられると歯止めがきかなくなる。
自信家かつ猜疑心の強い性格で、詐欺師の職業病ゆえに、無意識のうちに嘘を量産してしまったり
本心を悟られないよう、適当なエピソードを捏造して話を有耶無耶にしてしまう癖がある。
平然とリスクを冒したり、味方を騙したりと目的を達成するためならば手段を一切選ばないタイプ。
幼少期から運動というものと距離を置いて生活をしてきたため、体力が著しく低いのが弱点。
ヒロインは演技派な相棒。サブに天然純粋な同級生。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はC。
三百人近い入学生の内、卒業できるのは十数名というシビアさな上、弱肉強食が蔓延している殺伐とした環境。
更には主人公の目的は殺された育ての親の復讐&陰謀の解明と、ダーク&シリアス濃い目の作風ですが
そんな中、頭脳と策略と演技でピンチを切り抜け勝利を掴んでいく主人公とニーナのコンビが格好いい。
二転三転する展開、これはもう逆転は無理だろという劣勢からの大逆転と、とにかく目が離せませんでした。
キャラに関しては、文字通りどんな手を使っても勝利を掴みに行くという姿勢の主人公が存在感バッチリ。
バトル予定地に業者を呼んで細工を施したりとか、下準備が徹底的すぎて感心すら覚えましたね。
彼のパートナーであるニーナは普段の残念な感じと演技の時の豹変っぷりのギャップが目を惹きましたし。
本筋は三巻完結と短めな柄、過不足なくしっかりと話が纏まっていて、見所も満載だったかと。
あえて不満点を挙げるなら、鉄火場ばかりであったがゆえに日常&ラブコメパートが少なかったところでしょうか。