虚ろなるレガリア 三雲岳斗(電撃文庫)
廃墟の街で出会った少年と少女が紡ぐ、新たなる龍と龍殺しの物語。
東京上空に現れた巨大な龍、魍獣と呼ばれる怪物たちの出現と、世界各地で巻き起こった「大殺戮」によって
日本人は死に絶え国家が滅び、日本全土は各国の軍隊と犯罪組織に占領された無法地帯と化してしまった世界が
舞台となっていて、廃墟の街で巡り合った主人公とメインヒロインの彩葉は数少ない日本人の生き残り。
と、ディストピア感溢れる世界観が目を惹き、話に引き込まれるダークバトルファンタジーになっています。
しかしこの作品、掴みはバッチリと運命的なボーイミーツガールから始まる物語になっているというのに
背景が悲惨すぎてロマンスを感じられないどころか、ちゃんとハッピーエンドになるのか不安。まあ杞憂でしたが。
ラストは世界が救われてから三年後、世界を滅ぼすべく姿を現した天使の陰謀を防ぎ、ハッピーエンド。
ラブコメ面はメインヒロインの彩葉と結ばれて終了。
主人公は龍の血を浴びたことで不死の肉体を手に入れ、隔離地帯「二十三区」から骨董や美術品を運び出す
回収屋として一人きりで生きてきた、数少ない日本人の生き残りである少年。
自らが引き起こした大殺戮で行方不明になった妹、鳴沢珠依を探し続けている。
大殺戮の後の四年間を日本人として蔑まれながらもずっと一人で生き抜いてきたがゆえに考え方が荒んでおり
言動も不愛想でぶっきらぼうなところが目立つが、根は無辜の人間を見捨てられないお人よし。
自分が日本人だということを、そして人間だったことを忘れないために、人を殺さないようにしている。
ヒロインは感情豊かな魍獣使い、ヤンデレ義妹、引っ込み思案な眼鏡っ娘、冷徹&天真爛漫な双子姉妹。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
評価はC。
主人公はドラゴンスレイヤー! という看板だけ見ると正に王道ですし浪漫に溢れているのですが
舞台がファンタジーな異世界ではなく、地球となっているがゆえに被害の悲惨さのほうが目につきました。
しかもガチで滅びているのは世界の中でも日本だけなので、各国は軍隊や兵器を送り込み放題なわけで…
額面上の戦力差だけ見れば笑うしかないレベルで主人公が不利であり、しかしだからこそそんな劣勢の中で
復讐のために覚悟を決めて戦場に立つ彼の姿が格好良く、勝利の瞬間が輝いていましたね。
脇を固めるヒロインや仲間たちも個性豊かで頼もしい面子揃いで、見ていて飽きなかったですし。
本筋は世界を救ってから数年後を描いた最終巻ということで、一巻丸々使ったエピローグになるのかなと思いきや
別の敵が現れてまた世界を救って、と素直に平和が満喫できず、それでも最後はしっかりと大団円でよかったです。