五人一役でも君が好き   壱日千次(MF文庫J)



好きな人が五人で一人のフリをしていたので、全員カノジョにしようと思った少年の学園ラブコメストーリー。
五人姉妹なヒロインということで、漫画「五〇分の花嫁」を連想してしまう当作品ですが、内容は大分違います。
あちらは交流していくうちに主人公に惚れた五姉妹が彼を取り合うという構成でしたが、こちらはほぼ逆。
五人全員に惚れた主人公が彼女たち全員を惚れさせてハーレムを築こうとしているというトンデモ展開。
ヒロイン側はヒロイン側でそれぞれに特技のある五人が、たった一人の存在を演じていたりと破天荒すぎる…
ラブコメ面は近衛姉妹ハーレムを成立させるべく奮闘する主人公ですが、さて。

主人公は入学早々に肥だめに落ちて死にかけ、絶望していたところを救ってくれた生徒会長に惚れたものの
彼女の正体は、実は特技の違う五つ子が五人一役で演じていた虚像だったと知ってしまった少年。
紛れもない美少年であり、小柄で可憐な女の子といった感じの庇護欲をそそられる外見をしている。
U‐15の日本代表に選ばれ、スポーツ特待生として名門校に入学するほどの野球選手だったのだが
入学前にクラスメイトを庇って交通事故に遭い、選手生命を断たれてしまったという過去を持つ。
思い切りがよく、こうと決めたら一直線な性格で、目的のためならばいかなる労苦も、打算で動くことも厭わない。
野球ができなくなり「悲運のエース」と呼ばれるようになってから世評に掌を返された経験から
内心では一部を除いて人間不信気味だが、好感度アップに繋がると考え外面をよくしている。
普段から万全の備えをするのが野球部時代からのポリシーな努力家。

ヒロインは勉強の長女、運動の次女、SNSの三女、演技の四女、優しさの五女、引きこもりの六女。
一番のお気に入りは五人一役おいてボランティア活動や花壇の手入れなどを担当している五女、近衛愛。
姉妹の中で唯一方言を使っており、家族と話したり、慌てた時に「〜だべ」な方言が出てしまう。
誰かを応援するのが大好きで、中学時代はチアリーディング部に所属していた。
心優しく包容力があり聞き上手、更には料理上手で家事万能とお嫁さん適性が高く
また、誰かと争うのが苦手で、遠慮深いという美点を持っている。
趣味は羊毛フェルトで人形を作ること。習慣は日記をつけること。

現時点(一巻)においての評価はC。
この作品、とにかく主人公の頭のネジがぶっ飛びすぎているのが特徴であり、売りだと思います。
自分を救ってくれた生徒会長に恋をし、彼女に近づくために死ぬ気で努力をして補佐につくことに成功。
と、ここまでなら恋に一途な好漢なのですが、実はその本性がとんでもなく凄くもあり酷くもあるわけで。
彼はこの後生徒会長が五人一役だと知ってしまうのですが、何故かそこでハーレムを築くことを決意します。
で、その目的を達成するために高収入かつ海外(ハーレムOKな国に移住するため)で潰しがきく医者を志したり
夜の生活のために亜鉛摂取&体力をつけようとしたり、自分だけが知る五人一役を好感度アップに活用したり
秘密を巧妙に罪悪感として利用しハーレムを認めさせようとしたりと、この男、欲望に忠実すぎなんですね。
ただ、客観的にはぶっちゃけクズなんですが、原動力の恋心は本物ですし、努力と誠実さもガチなので
好感のほうが強いですし「いいぞもっとやれ!」と応援したくなる魅力があります。
本筋はハーレム願望を暴露されてしまったことでヒロインたちの好感度を急落させてしまった主人公ですが…?
何故五人一役をしなければならないのか、などといった近衛姉妹の家の事情も気になるところ。