16年間魔法が使えず落ちこぼれだった俺が、科学者だった前世を
思い出して異世界無双
                                ねぶくろ(ファミ通文庫)



実験と観察で魔法の秘密を解き明かすアカデミックファンタジーストーリー。
魔法。それはファンタジー系世界観の物語ではお約束にして必ずと言っていいほど登場する概念。
使用者の魔力と引き換えに物理法則を無視した現象を起こす術法、というのが基本的な定義なわけですが
大体は「そういうものだから」というふわっとしたイメージで普及しているのが常です。
では、そこに科学という視点を加え、発展&応用に活かすことができれば?
この作品はそんな、科学の知識がある主人公ならではの魔法へのアプローチをメインにした話になっています。
ラブコメ面は今のところ進展なし。メインヒロインのダミアンがお相手になりそうではありますが、さて。

主人公は16歳の誕生日に階段から落ちた衝撃で、突然科学者だった前世の記憶を思い出した
貴族の長男でありながら生まれつき魔法が使えず、落ちこぼれと呼ばれている少年。
元は気弱で鬱々とした性格だったが、前世の記憶が蘇ったことで好奇心旺盛で物怖じしない性格になった。
前世では28歳まで生きていたこともあり、大人びた落ち着きと冷静さ、理知的な思考を有している。
学究の徒らしく、一度集中して物事を考えだすと他の事を意識から排除してしまう悪癖持ち。

ヒロインはポンコツ最強魔法使い。サブにドジな新米メイド、武闘派王女。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(二巻)においての評価はC。
科学で魔法を強化する、という試みを行う作品はたまに見ますが、当作品はそこに焦点を当てているだけあって
徹底的に実験と観察、そして考察が行われます。自然、説明や理屈をこねる描写が多くなっているため
読書カロリーが高めになっているのが難点ではありますが、ワクワク感があるのでスイスイ読めます。
落ちこぼれと蔑まれていた主人公が、己だけが持つ独自の力(知識)によって注目を集めていく。
という、一種の主人公無双&成り上がり要素も見ていて気持ち良いですしね。
主人公にしても、自分だけの知識だからと独りよがりにならず、力が及ばない部分はちゃんと周囲の協力を
得ようとしているので不快感がないですし、味方側の面子も良い人間ばかりでグッド。
本筋は陰謀によって故郷から出奔するはめになった主人公。王都で新しい生活が始まりましたが…?