負けヒロインが多すぎる!   雨森たきび(ガガガ文庫)



達観ぼっちな少年が負けヒロイン――マケインたちに絡まれる謎の青春物語。
負けヒロイン。それは複数ヒロインもののラブコメにおいては必須の、しかし決して報われない悲しい存在。
この作品はそんな存在に焦点を当てている話なわけですが、当然登場する女の子たちは立ち位置の都合上
登場時点で既に恋に破れているわけで。ではそんな彼女たちはこの物語では何をするのか?
さっさとキッパリ気持ちを切り替えて次の恋へと邁進する――とはならないわけで。
まあ、考えてみれば当たり前のことではあるんですよね。失恋したからってすぐに諦められるはずがない。
この作品はそんな、負けてからさらに輝こうとする女の子たちの力強さが描かれています。
ラブコメ面は今のところ進展なし。とはいえ、徐々に負けヒロインたちにフラグが立ち始めているようで…?

主人公は人気女子・八奈見杏菜が男子に振られるところを目撃したことを切欠に
負け感あふれる女子たちに絡まれるようになってしまった高校一年生の少年。
危機感が薄くいつもボンヤリ気味だが、ある意味達観しており、背景キャラを自認している。
気づかいができないわけではないが、女心に疎く色々鈍感なため、女の子からは非難を受けがち。

ヒロインは食いしん坊女子、活発陸上女子、腐り気味女子、完璧超人妹、屍系ギャル、あざとい後輩。
一番のお気に入りは全てをこなすパーフェクト妹な中学二年生、温水佳樹。
物腰丁寧で気配り上手、料理上手だが、兄である主人公のことを構いたがる面が目立つ。
というか、兄の恋人候補を面接しようとするなど、行き過ぎた言動があったりするかなりヤバめのブラコン。
通っている中学校では生徒会庶務を務めており、よく男子からは告白されている。

現時点(七巻)においての評価はC。
負けヒロインというと、物語開始時点では両想いだったのに、手をこまねいているうちにポッと出ヒロインに
主人公を掻っ攫われてしまったり、自分の想いを押し殺し恋敵のもとへと主人公の背中を押したりと
とにかく不憫な役回りが常。それが推している娘だった日には読者としては悲しみしかありません。
とはいえ、可哀そうだとは思っても、この作品の負けヒロインたちの振られ芸は見ていて笑わざるを得ない。
うんそりゃ振られるよね。振られる役回りだよね! と納得しかないからなぁこの負けヒロインたち…
その一方で、脇役な傍観者であるがゆえに他人事のように冷静で、しかしなんだかんだで彼女たちを放置せず
変わらない態度で見守り、振られた後はしっかりケアを行う主人公が良い味を出しています。
本筋は新入部員兼後輩として新たな負けヒロインが登場し、高校二年生編スタート。