モブから始まる探索英雄譚   海翔(HJ文庫)



モブな探索者から成り上がる現代バトルファンタジーストーリー。
大枠としてはダンジョン攻略ものですね。ダンジョンが現れた現代日本が舞台になっています。
ダンジョンが生活に根付いている世界観であるため、ダンジョン探索を生業とする「探索者」や
探索者を統括するギルドなども存在しており、しっかりとしたシステムができあがっています。
そんな中、当作品の主人公はパッとしない実力しかなく、特筆すべき能力も持たないモブポジション。
よくある、周囲から蔑まれる落ちこぼれからのスタートよりはマシとはいえ、燻っていたのは間違いないため
偶然掴んだ幸運を活かし、手に入れた強力な仲間と共に成り上がっていく様は中々に爽快。
ラブコメ面は本命(相手側も好意ありで主人公がヘタレなだけ)である葛城春香との仲が順調に進展中。

主人公はステータスの低い、いわゆるモブキャラながら、レアモンスターである金色のスライムを倒して
ドロップ品として手に入れた激レアアイテム「サーバントカード」を切欠に、状況が一転した高校生の少年。
学校では良くも悪くも目立っていない、クラスメイトA的なポジションについている。
厨二病が治りきっておらず、思慮が浅く、調子に乗りやすいため、安易な判断をくだしがちだが
二年間以上、芽が出ずとも一人で探索者を続けるなど、根性と忍耐力は人並み以上。
お金と夢(英雄になりたい)とロマンを追いかけるため探索者になったが、一番の理由は過去に
自分を救ってくれた初恋の女の子である葛城春香に相応しい男になり告白するため。

ヒロインは甘えたがりなヴァルキリー、自由奔放な悪魔、人気者な幼馴染。
サブにミステリアスなお嬢様、小動物系お嬢様、大和撫子お嬢様、頑張り屋な後輩なども。
九巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点(十巻)においての評価はC。
切欠こそただの運でしたが、それ以降の上昇の要因は主人公の努力と堅実さ、という構成がいいですね。
激レアアイテムから召喚した仲間は確かに強力ではありますが、デメリットもちゃんと存在しているため
単純に使い魔無双とはいかず、きちんと手札の切り方、活かし方を考えないといけないですし。
一足飛びに強くなり、大きな功績を得るのではなく、一歩一歩地道に、しかし確かに英雄への道を歩んでいく。
全ては高嶺の花である幼馴染に告白するため。派手さこそ微妙ですが、そのわかりやすさはグッド。
ダンジョン攻略以外の部分、日常パートがしっかりと描かれているのも緩急がきいていていいですしね。
ただ、少々文章が淡々としすぎているのと、設定の作り込みが甘いのがマイナス要素でしょうか。
本筋は懸命なダンジョン攻略の果てに、仲間の病気を治す目途をつける事に成功した主人公。
切羽詰まった状況を抜け出し、余裕ができたことから今度は後輩の育成に励むことに。