幼なじみからの恋愛相談。 ケンノジ(角川スニーカー文庫)
不器用な幼なじみ同士が紡ぐ、甘くてじれったい恋物語。
メインヒロインは幼馴染、舞台はファンタジー要素なしの現代日本の高校、と王道の青春物語です。
最近ではラブコメにおいて負けフラグの権化という印象が蔓延している感がある幼馴染という属性ですが
この話のヒロインである雛形栞には負けフラグなど知るか! とばかりのエネルギーが溢れています。
タイトル通りの恋愛相談を切欠にグイグイとアプローチを仕掛ける彼女の姿に敗北の未来は見えません。
まあ、それゆえに主人公が典型的な鈍感系になっているのは痛し痒しではあるのですが。
片方が積極的なラブコメにおいてもう片方の察しがいいと即座に決着してしまうので仕方ないんですけどね。
ラストはメインヒロインの雛形栞と結ばれ、そして七年後二人は結婚式を挙げるのだったエンド。
主人公は最近ロクに話すらしていなかった幼馴染の雛形栞から恋愛相談を受けることになった少年。
元野球部のエースで周囲からは期待されていたが、怪我を理由に退部した過去がある。
理性的な性格をしており、コミュ障というわけではないが、狭く深い交友関係を好むため友達は多くはない。
ヒロインはクールビューティな幼馴染、人当たりの良い後輩、陰キャな級友。
一番のお気に入りは主人公の幼馴染にして女子バスケ部に所属する高校二年生、雛形栞。
長い黒髪、少しだけキツそうに見える切れ長の瞳、色白の整った顔立ちのスレンダー美少女。
整った容姿と雰囲気も相まって学内での人気は高く、クールビューティと呼ばれている。
口数が少なく普段は無表情なことも多いが、何を考えているのかわからないというタイプではなく
他者との付き合いも悪くはない。また、幼馴染である主人公の前では表情豊かな面を見せることもしばしば。
内気なところがあるが、自身の恋愛面における行動力は凄い。
評価はD。
話を引っ張るためには仕方がないとはいえ、ラブコメものにおいてヒロインのわかりやすいアプローチを前に
ありえない鈍感さを前面に押し出す主人公にはイライラが積もるのが読者としての常ですが…
この作品の場合は過剰なフラストレーションが溜まることはないかと。少なくとも私の場合は、ですが。
まず、主人公は一応「コイツ俺のことが好きなのでは?」と疑っていて、意識しているのは間違いないですし
そもそも初手が直接的な告白ではなく、恋愛相談という形になっていた以上、確信が持てないのは当然。
ましてや思春期の男子である以上、もし違っていたら…と考えれば迂闊な行動はとれませんわな。
いやまあそれでも読者視点では栞の言動は明らかに主人公への好意を示しているのですが。
本筋は一巻だけなら青春恋愛ものとして真っ当に盛り上がっていたと思うのですが…
それ以降は単なる消化試合を見せられていただけな印象。特に最終巻の二人が結ばれる告白シーンとか
一番の見せ場なのにも関わらず、ドラマ性がほとんどないままあっさりと恋人関係が成立しちゃいましたし。
その後のイチャラブ描写にしても淡々と進むだけな上、締めの結婚式への繋ぎ方も適当という。
あと、個人的な不満としては主人公に惚れていたであろう後輩・本間小夏の扱い。
結構アプローチを頑張っていたのに噛ませにすらなれず負けヒロイン化とか、何しに出てきたのか…