闇堕ちヒロインを幸せにする計画　　　上川景（富士見ファンタジア文庫）



少年が少女の悲劇を覆すヒロイックファンタジーストーリー。
近い未来において闇堕ちし、世界に災厄をもたらすヒロインを救うというのが物語の目的なわけですが
主人公がこの手の設定のお約束である「ゲームの世界に生まれ変わった原作知識持ちの転生者」ではなく
あくまで舞台となる世界の原住民であり、未来のことは魔本で知った、という点が特徴。
一から十まで網羅されているゲーム知識ではなく、闇堕ちヒロインによる最悪の未来という予言だけが
指標であるがゆえに、何故ヒロインが闇堕ちするのか、というところから始めないといけないため
魔法によるバトル要素よりも推理をして謎を解くミステリー要素のほうが濃いです。
ラブコメ面は今のところ進展なし。というか、この設定だとフラグが立てば立つほど世界が危なくなっていく気が…
もし主人公がフラグ管理をミスったり、あるいは死んでしまえば闇堕ちが発動する可能性大ですし。

主人公は事件の最中に未来を予言する魔本と出会ったことで、運命が大きく変わることになった少年。
ややぶっきらぼうで礼節やデリカシーに欠けた所があるが、根は善にしてお人よし。
武術や剣術の才能はまるでなく、魔力も上手く使えないが、抜群の記憶力をはじめとして頭脳面は優秀。
満ち溢れた輝きを放つエリートな姉に憧れ、彼女のようになりたいと願っている。

ヒロインは勝気な皇女、生意気な商人令嬢。
一巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

現時点（一巻）においての評価はＣ。
テーマや設定からして重めのシリアス一辺倒なのかなと思いきや、コミカルなシーンが結構挟まれています。
これを読み易さに貢献しているととるか、空気が読めていないととるかが評価の分かれ目かと。
個人的な評価としては後者よりですかね。そもそもギャグ自体滑ってる感が強いですし…
話の展開も駆け足でキャラの掘り下げが不十分なので感情移入がしにくいですし、もっと丁寧さが欲しいところ。
キャラに関しては、魔法を使えないがゆえに頭を使って活路を見出していく主人公が頼もしいですし
相棒である魔本との掛け合いも軽妙なのですが、やはり作風とマッチしていない感があるのが難点。
ヒロインたちにしても未来で闇堕ち資質があるだけに、救う前は勿論、救ったあとも取り扱い注意なわけで。
彼女たちが爆発しないように上手く接し続けないといけない主人公は一生大変そうである。
本筋はヒロインたちを意図的に闇堕ちさせ、世界を崩壊させんとする皇帝を倒すことに成功するも
世界にはまだまだ闇堕ち予定のヒロインがいる上、姉の治療問題もありと前途は多難。