世界最強騎士団の切り札は俺らしい 輝井永澄(富士見ファンタジア文庫)
最強の少年と最強の騎士団の出会いからはじまる超弩級バトルファンタジーストーリー。
剣の一振りで山を砕き海を割る。呪文を唱えれば空が裂け時間が逆行し次元を超えて雷鳴が弾ける。
人類最後の砦である最強の十二人の騎士たち「超魔覇天騎士団」。相対するは人類の宿敵である魔人。
そんな敵も味方も最強だらけな中、彼らを凌駕する力を見せつける最強の中の最強である主人公。
強者は己の力に責任があり力なき者のために力を振るう義務がある。理屈そのものは正しくはあるものの
実際のところ力を振るう理由は自由であり、個人個人の価値観次第であるべきなわけで…
それでも、人々を守る騎士だから責任も義務も背負って戦場に立つ。賢くはないけれどその生き様は尊く熱い。
ラブコメ面は今のところ進展なし。
主人公は辺境の山奥で暮らす、魔力を有さない「素民」である羊飼いの少年。
かつて魔獣に襲われて壊滅した町で唯一何故か生き残ったため、周囲からは鬼子として忌み避けられている。
目立つことを好まず、良く言えば温厚で落ち着いており、悪く言えば信念に欠けるやや冷めた性格。
世界の理から外れた力を持つがゆえに自分の力で誰かが傷ついたりすることを恐れている。
ヒロインは聡明な盟主、気弱な騎士、世話焼きな幼馴染、正義の魔女。
二巻の時点では特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。
現時点(二巻)においての評価はC。
人類の中でも最強格が集まっている集団、というのはバトル要素のある作品では珍しくない存在ですが
彼らは人格が破綻していたり、敵側に寝返ったり、主人公の噛ませになったりと肩書き倒れになることもしばしば。
しかしこの話に登場する「超魔覇天騎士団」は名に恥じぬ実力を持っていて、力に驕っている者もいない。
強者特有の傲慢な嫌味さがほとんどないので見ていて気持ちいいですし、そんな彼らだからこそ
己の力を嫌う主人公の心情を変える理由付けとしての説得力が申し分なく、誰も彼もが格好いい。
肝心のバトルパートも厨二心をくすぐる二つ名や必殺技の乱舞していて熱く派手なのでサクサク読めます。
ただ、制限や不得手な戦場があったり、力の使い過ぎで弱ったりと、主人公の最強感が思ったより微妙かも?
本筋は超魔覇天騎士団にナンバーゼロ「無能力者(イレギュラー)」として入団した主人公ですが
魔王勢力、重要アイテムらしき「聖杯」、未登場の同僚たち、主人公の力の謎など伏線は盛りだくさん。