最強騎士団長の世直し旅   佐竹アキノリ(ヒーロー文庫)



最強の騎士団長が獣人美少女×2とお忍びでのんびり世直し旅な勧善懲悪の爽快ストーリー。
一言で言うならファンタジー版水戸黄門ですね。身分を隠した主人公が仲間と共に旅をしながら
各地で人々を苦しめている事件を解決したり、情け無用な悪を打ち倒すという構成になっています。
とはいえ、バトルばかりではなく、各地の名産品の料理に舌鼓をうったり、名所を見学したりと
旅情あふれるほのぼのとした日常パートもしっかり描写されているので、展開の緩急もバッチリ。
ラストは野望を果たさんとする魔人との戦争に勝利し、平和になった世界で最強騎士団長は再び世直し旅へ。
ラブコメ的には愛の告白こそなかったものの、ヒロイン二人とずっと一緒にいるだろうと思う主人公で終了。

主人公は人類の敵である魔人の中でも最強の存在である竜魔王を打ち倒した英雄にして
ジェレム王国カルディア騎士団の第八騎士団「銀翼騎士団」の団長を務める青年。
生真面目で愚直、律儀、正義感の強い性格で思い立ったら強引であっても即行動! な脳筋タイプ。
ただ、融通が利かないというわけではなく、他人をからかったりとお茶目な一面も見せることも。
平民の生まれで共用もない身でありながら、剣の腕一本で騎士団長まで昇り詰めた俊英だが
名誉欲や金銭欲は薄く、困っている人を見捨てられない、悪事は見逃せない、が主な行動原理。
女性関係に関しては朴念仁だが、それゆえに下心のない無自覚の口説き文句を吐くこともしばしば。

ヒロインは狐人な幻影魔導師、うっかり者な騎士見習い。
特に際立ってお気に入りのヒロインはなし。

評価はC。
ラスボスが倒された後の世界が舞台ということでシリアス要素は薄めになるのかな、と思いきや
魔人の残党や人間の悪党が各地で悪事を働いていたりとまだまだ平和は遠い感じでした。
だからこそ、個人で動きつつもイザとなれば騎士団も動かせる主人公の世直し旅が効果的なのがよかったです。
主人公の戦闘力は世界最強クラスなので悪退治パートの安心感と爽快感は抜群ですし、彼自身の人格も
英雄として申し分なし。味方も有能な面子揃いな上、国のトップである王にも気に入られているので
変に足を引っ張る存在がいないため、フラストレーションがたまらなかったのもグッド。
お供の獣人娘二人をはじめとした仲間たちとの掛け合いも和気藹々と楽し気で良い感じでしたし。
本筋はクライマックスこそ世界の命運をかけた戦争が行われ、人死ありのシリアス展開ではありましたが
そこ以外ではタイトル通りの世直し旅模様がしっかりと描かれていて楽しかったです。
最後の締めが再びの旅立ち、というのも作品のカラーにピッタリで申し分のない読後感でした。