勇者になりたい魔人の冒険   箕崎准(講談社ラノベ文庫)



勇者になりたかった青年が魔人として転生し、自分の願いの為に戦う異世界ファンタジーストーリー。
大枠としては異世界転生ものですね。タイトル通り、主人公は勇者になりたいという願望を持っているのですが
その割に真剣さや情熱が見えないため、ストーリー自体は王道ながら今一つ盛り上がりに欠ける印象。
というかこの設定なら別に主人公は現代日本からの転生者である必要はなかったのでは…?
復活した悪の魔人が気まぐれで勇者を目指す、で十分ドラマチックだし、爽快感があったような。
お色気シーンの豊富さも、目の保養にはなってもやはり主人公のキャラと噛み合ってない感がありますし。
ラブコメ面は盟約によってメインヒロインのラピスと将来的に婚姻することが確定の模様。
主人公は皇帝に就任したので、一夫多妻も期待したいところですが、さて。

主人公は女子高生を庇って死んだ後、異世界にて略奪王と呼ばれた魔人ルーティアに転生した日本人の青年。
魔人ルーティアとしての外見は、長い銀色の髪に、少しくすみがかかった肌、少し濃い碧の瞳。
エルフとは少し違った形で尖った耳、木場のように尖っている八重歯、大柄な体躯のイケメンというもの。
異世界では魔人っぽく振る舞ってはいるが、正義感こそ一人前ながら素はビビリでヘタレ。
妄想たくましいが、誰かを守る。自分が思う、正しいことをする。そんな勇者になりたいと願っている。
前世の二十四年の人生において彼女はいたことがなく、当然童貞であったため女性には不慣れ。

ヒロインは天真爛漫なエルフ姫、真面目なエルフ騎士、クールな猫獣人、自由奔放な魔人。
一番のお気に入りはエルフの国であるアズール王国王宮騎士団に所属している騎士、リゼル・アイギス。
稲穂のように明るく輝く金色の髪、翠色の瞳、そして抜群のスタイルを有する美少女。
真面目で忠義に熱く堅物な性格で、いつも無表情寄りでキリッとしているなど絵にかいたような女騎士。
昔から剣に目がない。

現時点(一巻)においての評価はC。
異世界転生から始まる物語、という意味では王道であり安定もしているのですが、良くも悪くも普通。
キャラもストーリーもイベントも尖った部分というか、この作品ならではという売りがない。
逆を言えば大きな齟齬や欠点がなく、内容も分かりやすいのでサクサク読み進めることができるのですが。
一番の不満点である主人公の受動性については、次巻以降で評価が覆るか否かが焦点ですね。
一巻終盤で立場をハッキリさせた以上、前に進むしかないわけですし。性根の優しさは好感を持てるのですが…
まあ、ヒロインズも可愛くはあるものの、然程尖ったところがないのでちょうどいいのかもしれませんけども。
本筋は帝国を乗っ取り、エルフの国を滅ぼさんとしていた魔人を撃破した功績で皇帝となった主人公。
今後は襲来するであろう魔人や魔王との戦いになると思われますが、戦記ものっぽくなるのかな?