ベルサイユの獅子 なめこ印(講談社ラノベ文庫)
貴族に支配された十八世紀欧州を舞台に、とある兄妹が世界を変える英雄譚。
大枠としては歴史上の有名人が女性化しているという、IFの過去の世界への転生ものですね。
この作品は十八世紀の欧州、つまりフランス革命後のナポレオンが主役となる時代を扱っており
当然、主人公が力を貸す相手はナポレオン……のIFである女性化したナポレオンことレオナとなります。
有名人の女性化以外にもファンタジー要素である魔法が存在していたりと別世界感が濃い目ですが
そのほかの部分は基本的に史実に忠実で、かなり細かいところまで調べられているので
歴史好きの読者ならば楽しんで読めるかと。反面、そうでない読者には若干敷居が高いかも?
ラブコメ面は今のところ進展はないものの、話の流れ的にメインヒロインのレオナルートで間違いなさそう。
主人公は異なる世界線のナポレオンの義兄として転生してしまった瞬間記憶能力者の少年。
前世では瞬間記憶能力という才能を持つがゆえに、周囲から排斥されぬよう己を殺して生きてきた。
現世では平時は内政で未来の知識を活用し、戦時では瞬間記憶能力を活かし狙撃手を務めている。
精神が成熟している転生者ゆえか、大人びた落ち着きがあり、面倒見もよく気配りもできて子供好き。
ヒロインは才気煥発な義妹、姉御肌な将軍、気が小さい昔馴染み、天真爛漫な職人。
一番のお気に入りはブリエンヌ陸軍幼年学校で出会った貧乏貴族の娘、ルイ=ニコラ・ダウー。
守りの戦いを得意とし、史実においては「不敗」を冠する、大きなお下げが特徴の美少女。
普段は物腰穏やかで気が小さく、とても軍人には見えないが、その実心の奥底に鋼の芯を持っており
訓練では鬼教官に、戦場では機械のような揺るがぬ指揮官へと人が変わったように化ける。
貴族の家系だが貧乏で、ほとんど平民と変わらない生活を送っていたため身分への偏見がない。
現時点(一巻)においての評価はC。
この手の話の主人公は転生者特有の未来知識を活かして活躍する、というのがスタンダードですが
知識が不十分だったり、大きな変化を起こして知識が通用しなくなることを恐れて思い切った行動がとれず
結果として戦いや交渉で苦戦したり、歴史通りの悲劇やピンチを発生させてしまいがちですが
この主人公は瞬間記憶能力持ちで知識面は無問題ですし、義妹のために歴史を変えることに躊躇がないので
未来知識を遠慮なく利用してくれるのが痛快。というか、魔法がチートなので知識なしだと無理ゲーな気が。
なお、戦記ものとしての色が濃さからラブコメ度はやや薄めですが、ヒロインたちは普通に可愛いです。
本筋は不敗神話を持つ敵将を撃破して歴史を変え、レオナはフランス人民の皇帝に就任。
ナポレオンを超える英雄とならんとする妹を支える主人公共々、次なる、そして未知なる戦いへ。