社畜ですが、種族進化して最強へと至ります   力水(ダッシュエックス文庫)



世界の変革を決定づけた危険な者たちが紡ぐ英雄譚。
主人公の家の敷地にダンジョンが発生! というスタートだったので、てっきりダンジョン攻略がメインに
なるのかと思いきや、そこで手にした力を利用したヒーロー活劇のほうに重点が置かれている模様。
しかし、モンスターやクエスト、ダンジョンが突如発生するようになるわ全人類に種族選択を強制するわと
ゲームの設定を無理矢理現代地球に上書きしたような世界観ですが、元凶がいるなら悪趣味過ぎである。
所々で適当な感じになっていたりとコミカル風なのに、内実は結構エグい(実作中で際死人出まくり)ですし。
まあ、だからこそ主人公の無双全開な活躍(毎度詰めは甘いけど)っぷりが爽快感抜群なのですが。
ラストは悪逆を尽くす鬼の王を撃破し、ひとまず平穏となった世界で最愛の女性と再会してハッピーエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインのクロノと結ばれて終了。

主人公は自宅敷地内に発生したダンジョンで力を得て種族進化を遂げていくことになった三十二歳の社畜。
どこか自分を諦め、自身を薄情な臆病者と考えている。外見から誤解を受けやすいが根は面倒見がよい。
人付き合いが苦手で要領が悪い個人主義者な上、シャイであるため、異性と意識する相手とはロクに話せない。
上記の性格ゆえに他者に悪感情を持たれることが多いが、そんな彼を信頼する者も少数ながらいる様子。
特技は避けること。苦手は絶叫系の乗り物、好きなものは小説とゲーム。モットーは「いかに楽して生きるか」
ゲームをプレイする時はしこたまレベルを上げてからストーリーを進める忍耐に長けた慎重派。

ヒロインは初心ビッチ女神、合法ロリな天才ボクっ娘、人気者な後輩。
他にもフラグが立ちそうな、既に立っていそうな女性キャラもチラホラといますが割愛。
一番のお気に入りは主人公と同じ会社の研究開発部のエースな天才後輩、雨宮梓。
ぱっつん刈りにした、膝まで伸ばした長い金髪に、いつも眠そうな青い瞳(母親がアングロサクソン系)。
そして、二十四歳でありながら小学生高学年ほどの幼い外見が特徴の美人(?)
基本温和でお堅い性格だが素は子供っぽく、三度の飯よりも研究が好き。趣味はゲーム。
次期社長候補のボンボンにしてイケメンな幼馴染が許嫁だが、恋愛対象としては見ておらず
反面、好意を抱いた相手(主人公)には乙女チックかつ積極的な言動をとるなど、意外に恋愛脳な面も。
主人公には共通点の多さから共感と友情を抱いていたが、彼のふとした一言が切欠で意識をするように。

現評価はC。
設定こそ色々とごった煮感はありますが、ヒーローものとして読むと正統派に見えてしまう不思議。
肝心の主人公も、強い正義感も義侠心もなく、基本ダメ人間なのですが根はいい奴でしたし。
ただ、それだけに成したことに対する報酬が割に合っていない感があるのが不満点。
ヒーロー活動については正体を隠している以上仕方ないとはいえ、それ以外の部分がなぁ。
ヒロインたちからは結構好意を寄せられてはいましたが、ラブコメ展開自体が少なかったわけで…
本筋は形の上では綺麗に締められての完結でしたが、総評としては消化不良の一言に尽きました。
特に、最終巻詰め込みすぎ、ラスボス戦はあっさり終わり過ぎ、エピローグも騒動の規模の割に短過ぎ。
というか風呂敷の広げ具合から考えても、三巻完結という冊数の少なさの時点で無理があったわけで。
そもそも、この作品は方向性としてはヒーローものを期待して読んでいたわけですからね。
主人公とクロノの別れと出会いの物語をいきなりメインに持ってこられても困る、というのが正直な感想。
第一、前世の最愛とか出されたら他のヒロインの立場がないというか、なにしにフラグ立てたんだよって話に。
肝心のデスゲーム自体も、まだまだ続いていくわけで…