ヒロインレースはもうやめませんか?   旭蓑雄(電撃文庫)



新作漫画の連載のため彼女を作らんとする少年を巡る、リアルヒロインレースラブコメストーリー。
ラブコメものにおいて主人公に好意を持つヒロインが複数人登場すれば必ず起きる、それがヒロインレース。
未決着エンド、あるはハーレムエンドでもそれぞれ不満を抱く部分が出てくるものですが、それ以上に
一人を選ぶオチはどうしても他ヒロインのファンからのバッシングによる炎上が避けられないわけで…
だからこそ、そんなヒロインレースを否定しようとする主人公の試みは興味深く
同時にリアルで無自覚にヒロインレースが起きてしまっている、という構図が皮肉が利いていて面白い。
ラブコメ面はヒロイン側が主人公からの告白待ちという協定を結んでいますが、さて。

主人公はヒロインレースもののラブコメ漫画で一発当てるも、最終回の結末が読者間で炎上し
それがトラウマとなったため、新作ではヒロイン一人との純愛ものを描きたいと意気込むも
「彼女を作れば連載していい」という条件をつけられてしまった高校生漫画家の少年。
喜怒哀楽が激しく、思いついたら、やる気になったらとりあえず動いてみる行動力の塊で
物事に入り込みすぎるところがあり、自信家で調子に乗りやすい性格。
また、どれだけダメージを受けてもすぐに持ち直すポジティブシンキングを持ち前にしている。
生粋の漫画馬鹿で、高校生活のほとんどを漫画に捧げてきたため友達はおらず恋愛経験もない。

ヒロインはライバルな同期、アシスタントな後輩、鬼の担当編集者。
一番のお気に入りは同じ文芸部員にして主人公の漫画のアシスタントを務める後輩、都喜村しおり。
さらっとした長い黒髪に眼鏡という文学少女チックなルックスの美少女。
中学時代に児童文学の賞をとった才媛で、品行方正、真面目で気の利く献身的な性格をしている。
飲み込みが早く、父子家庭だったため家事全般もOKとヒロインとしてのスペックはかなり高いのだが
感受性が豊であるがゆえにヒロインの中では一番主人公への愛が重く、ヤンデレの素質あり。

現時点(二巻)においての評価はC。
題材が題材なだけにドロドロ展開があるのではないかと読む前は不安でしたが、読み味はサッパリ。
話全体の雰囲気がコミカル気味なのと、主人公のテンションの高さが良い方向に作用している印象ですね。
まあ、客観的に見るとこういう男はモテない気がしますが、ヒロイン視点が結構入っていることもあってか
不思議と彼女たちが彼に惚れたことに納得してしまうのがこの作品の凄いところな気がします。
なお、ヒロイン側もイロモノであるか、もしくは趣味が悪いだけなのでは? とは言ってはいけない。
本筋は新ヒロイン参入を既存ヒロインが妨害するというトンデモ展開を経てヒロインレース続行。