魔王2099 紫大悟(富士見ファンタジア文庫)
究極の発展を遂げた未来都市を舞台に、新たな世界を支配すべく再臨した伝説の魔王が躍動する物語。
大枠としては同世界の未来(五百年後)への転生ものですね。ただ、機械文明惑星と魔法文明惑星が
融合するという大災害が五百年の間に起きているため、魔導工学というパラダイムシフトが起きており
それゆえにサイバーパンクシティで魔王が暴れるというミスマッチ感がインパクト大です。
また、この手の未来転生ものは主人公の強みとなる部分(魔法とか)が時の流れと共に劣化ないしは消失し
他者の追随を許さないアドバンテージとなっている、というのがお約束ですが、この作品はそれが逆。
文明の異常な発展ゆえに時代遅れの存在となってしまっており、復活時点では弱者側というのが新鮮。
ラブコメ面はメインヒロインのマキナと結ばれ、周囲を固める味方も女性だらけに。
主人公は勇者に討伐され、滅びを迎えた後、500年の時を経て統合歴2099年に
サイバーパンクシティ「新宿市」に再臨を遂げた、かつて不死の王国に君臨した伝説の魔王。
魔王らしく尊大にして傲慢、プライドが高く自信過剰で独善的、敵には容赦がない性格だが
配下や友と認めた者に対しては寛容で慈悲深く、置かれた状況に適応する柔軟性も持ち合わせている。
ヒロインは献身的な忠臣。サブにツンデレな没落令嬢、気さくなハッカー、大人げない黒竜、マイペースな堕天使。
一番のお気に入りは炎に関する魔法を得意とする六魔侯のひとり、マキナ=ソレージュ。
抜けるような白い肌に、長い白銀の髪、薄紅色の瞳、小柄な体躯。
雪のような、そう形容するのが相応しい、可憐で儚げな、美しいというよりは可愛らしいタイプの美少女。
自分を処刑から助け、手を差し伸べてくれた魔王に揺るぎない忠誠と恋慕の情を抱いており
世界を支配するという崇高な目的も瑣末事、ただ彼が望んでいるのだからそれを叶えたいと考えている。
現時点(五巻)においての評価はC。
魔王としての力を取り戻すには信仰度という認知が必要、だからユーチューバーとして頑張る!
この発想には爆笑せざるを得ない。というか、魔王なのにやたらと適応力が高い主人公に感心します。
何せ状況を把握した後の最初のアクションが「とりあえず生活のために働くぞ!」ですし。
言動自体は魔王らしく尊大なのに、性根は妙に人間味があるというギャップが実にグッド。
そんな彼を五百年間健気に待ち続け、変わらぬ忠節を尽くそうとするマキナも相方として申し分なし。
世界観はハードボイルド風味なのに、ちょくちょくコミカルなやり取りを挟む作風も味があります。
本筋は悪魔の企みを粉砕し、三人目の元配下を取り戻した主人公。