古き掟の魔法騎士   羊太郎(富士見ファンタジア文庫)



野蛮人な最強の騎士がおくる、王家の伝承を巡る学園ソードファンタジーストーリー。
大枠としては千年後への転生+教官ものですね。前者は時の流れによる戦闘者の劣化ゆえの主人公の別格感。
後者は落ちこぼれクラスを教導によって引き上げていく成り上がり要素と、それぞれ王道の設定や
明快でわかりやすい展開が用意されているのでサクサクと読み進めることができます。
また、学園を舞台としつつも剣を戦闘の主軸に置いた騎士道物語という作風も浪漫が溢れていてグッド。
ラストは世界に永遠の冬をもたらさんとする蘇りし魔王と闇の妖精を撃破。
平和と幸福を取り戻した世界へと帰還した騎士は、主君である王の傍にあり続けるのだったエンド。
ラブコメ的には終始主人公が女性に興味なしだったため、進展なく終了。

主人公はキャルバニア王国の若き王子の手によって千年前の伝説時代から復活を遂げた
伝説時代最強の騎士と謳われると同時に「野蛮人」そして「閃光の騎士」の二つ名を持つ青年騎士。
世に伝わる叙事詩や物語では、本性は残虐非道にして冷酷無比。騎士道の欠片もない男とされ
悪役として謳われているが、実際は粗野で認めた相手以外には不遜でこそあるものの、主君に対する忠誠心。
誠実さ、勇猛果敢さ、優しさ、高潔さ、そして騎士としての確固たる信念を兼ね備えている騎士の中の騎士。
欠点というか、昔から何か一つに集中すると周りが見えなくなるところがある。

ヒロインは男装の王女、勝気な貴尾人。サブに放逐されたお嬢様や小動物系な没落貴族娘なども。
一番のお気に入りは空白の王位を継ぐため騎士にならんと奮闘する王女、アルマ=ノル=キャルバニア。
澄んだ青玉色の瞳に、純金を溶かし、流したかのような長い金髪を有する、控え目な胸の美少女。
真面目で素直で民想い。愛国心と正義感に溢れ、勇気と優しさをも併せ持つ王道を行く王の資質の持ち主。
初恋の人は物語の中のシド卿(主人公)で、いつか自分が王となったその時、王家の伝承通り復活した彼が
騎士として自分に仕えて、傍にいてくれる、というのが一人の少女としての密やかな夢。

評価はB。
伝説時代最強の騎士の武名に偽りなし! と言わんばかりの強さを見せてくれる主人公の活躍が実に爽快。
既に騎士として完成し、経験も申し分なしなのでメンタルにも隙が無いですし、評価はただただ格好いいの一言。
ヒロインたちを含めた教え子たちもキャラの差別化がしっかりできていて華やか&賑やかですし
圧倒的な戦闘力で目立つ主人公をはじめとして、各主要キャラにきちんと見せ場があるのもグッド。
本筋は最初から最後まで己の騎士道を貫く主人公の、そして彼に感化された騎士たちの、熱く輝く物語を
思う存分堪能できました。オチもご都合主義全開ではあったものの「よかった!」という感想が先に来ましたし。