ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで 
                                                  篠崎芳(オーバーラップ文庫)



かつて空気モブだったE級勇者が、絶対最強へと至る逆襲譚。
大枠としてはクラス単位での異世界召喚+底辺から這い上がっての逆襲&復讐ものですね。
この手の作品の主人公は初期能力やスキルに恵まれず、そのせいで周囲にバカにされたり蔑まれたりして
果てには追放されたり命を狙われたり、というのがテンプレ。この作品もその例に漏れないわけですが
見限る決断をするのが召喚者である女神自身というのが尚更に酷い。しかも生存率ゼロの遺跡に廃棄って…
あらすじとテーマゆえに内容はシリアス&ダーク色が濃い目で話の雰囲気も大部分が重いですが
それだけに、強くなった主人公が立ちはだかるクズや威圧感ある強敵たちを撃破していく様は爽快感抜群。
ラブコメ面はメインヒロインのセラスと結ばれ、結婚の約束も成立。

主人公はクラスメイトとともに、異世界へと召喚されるも、唯一の最低ランクであるE級勇者であったがために
女神ヴィシスにより生存率ゼロの遺跡に廃棄されてしまった「空気モブ」の高校生。
優しくしてくれた叔父夫婦に迷惑をかけないよう、問題のない子供になろうとし、異世界転移するまでは
実の両親から虐待を受けていた経験から自己を押し殺し、自分自身すらも騙し欺き「優しくて普通な空気モブ」を
演じていた(根が優しくないわけではない)がその本性は冷酷性を兼ね備えており、悪意や殺意には容赦がない。
また、上記のことから観察眼に長けており、演技も抜群に上手く、空気化して集団に紛れ込むのが得意。
相手が誰であれ、自分の定めたルールの中では公正。恩義に対しても恨みに対しても借りは返す主義。
過去に受けた虐待の影響に加え、女神に廃棄されてからは復讐を第一に置いているため、色恋への欲求は薄い。

ヒロインはハイエルフな姫騎士。昇格候補に文武両道なお嬢様や引っ込み思案な級友、ツンデレアラクネなども。
一番のお気に入りはネーア聖国の元聖騎士団長にしてハイエルフの姫、セラス・アシュレイン。
染み一つない乳白色の肌、細身の中の豊満で形の良い双丘、淡い金色の長髪、淡いブルーの瞳の美少女。
義理堅く真面目で良くも悪くも実直、そして自分に厳しい性格で嘘をつくのが苦手。
経歴の割には意外にも世間慣れしており、一人旅をしていたからか倹約家で、値切り交渉が上手い。
好きなことは古い文献を漁ることと湯浴み。

現時点(11.5巻)においての評価はC。
主人公のメインスキルが麻痺、睡眠、毒といった「状態異常」を操るというのが中々に斬新。
状態異常というと、敵が使ってくる分には鬱陶しいけれど、味方が使うには然程便利ではない。
という微妙な存在なわけですが、この主人公は検証計算して敵を嵌めたりと頭を使ってスキルを活用しており
真正面からの正攻法では倒せない相手を策略で突き崩すところが実に痛快かつ格好良いです。
スキル上、瞬間火力には欠けますがその分自身の敗北が迫っていることを悟り狼狽する敵の無様さは見ていて
スッキリしますしね。何せこの作品、女神やクラスメイトの大半を筆頭にとにかくクズが多すぎですし…
本筋は準備を整え、いよいよ復讐の旅を終わらせるための最終決戦へ。