呪剣の姫のオーバーキル   川岸殴魚(ガガガ文庫)



悪鬼も哭かせるオーバーキリング・スプラッタ無双ストーリー。
大枠としてはファンタジー世界を舞台にした、モンスターハントを主に描いている話ですね。
当然バトルがメインとなっていますが、特徴的なのは二点。一点目は主力であるメインヒロインのシェイが
呪属性武器を使う都合上、敵をオーバーキルせねばならず、グロくエグい惨状が起きやすい。
二点目は主人公が野戦鍛冶を行うこと。普通、鍛冶というと工房に籠ってジックリ時間をかけ行うものですが
この作品では仲間に守ってもらいながら戦闘中に突貫で鍛冶を行い、武器を作ってはどんどん渡す。
という、客観的に見ればかなりシュールかつトンデモな戦闘シーンが常態化しています。
まあ、その分共に命を懸けている仲間感が強く出ていてパーティーとしての一体感は申し分ないのですが。
ラストは最悪の脅威に勝利し、全ての因縁に決着。そして少年は相棒と共に平和な旅路へ。
ラブコメ的には進展がないまま終了。

主人公はシェイの専属鍛冶師として奮闘することになった儀仗鍛冶師を夢見る魔法鍛冶士の少年。
真面目で素直でお人よしな性格をしており、決して勇敢とは言えないが心の芯は強い。
いつか自らの技巧と才能の全てを使って歴史に名を残す刀匠となって実家を再起させることが夢。
集中していると周囲が目に入らなくなる癖がある。内臓の生臭い臭いが生理的に苦手。

ヒロインはクールな凄腕討伐者。サブにぐいぐい系ど根性エルフ、自由奔放な猫獣人。
一番のお気に入りは広大な辺境でたったの十人しかいない認定討伐者のひとりにして
最強の呪い耐性を持つユグール族の生き残りで「黒犬狩り」の異名を持つ凄腕討伐者シェイ・カイル。
象牙のような滑らかな艶を持つ銀の長髪、艶のある褐色の肌、少しツリ目気味の大きな赤紫の瞳
ただ目鼻立ちが整っている顔というだけではない、エキゾチックで神秘的ともいえる美貌を有する美人。
クールで人付き合いを苦手とし、情に流されないリアリストだが、老人の頼みには弱い。
若くて、女性で、ユグール族で、六禍である黒犬の討伐者、伯爵のお気に入りということで
同業者からは嫌われ、同時に恐がられているが、当人は全く気にしていない。

評価はC。
タイトル的に考えても、この作品で一番目を惹くのはどうしてもスプラッタシーンになるわけですが
所々のコミカルさもあって、読む前に身構えていたほどの不快感や読後感の悪さはなかったです。
締めが毎度軽い感じなのでスプラッタシーンもコメディの一部として受け入れることができましたし
何よりも、そもそも残酷行為を行う当人が趣味嗜好でやっているわけではないですからね。
まあ、命が軽い世界観であることは確かなので、緊張感に欠けてしまうのは良し悪しでしたが…
ブロッコリーが超強い武器になるような不条理な展開も発生しますし。後半になるとシリアス一辺倒なのですが。
本筋は全ての元凶を完全に撃破しての完結と、締め方自体はスッキリとしてはいたものの
決着シーンやエピローグの短さゆえに、色々と物足りなさも目立っていたかな、というのが正直な感想。