異世界よ、俺が無敵の吸血鬼だ! 猪野志士(電撃文庫)
異世界で笑いとエロが交錯する優雅なハーレム生活を目指す吸血鬼の物語。
大枠としては異世界召喚ものですね。主人公が社畜をしていた吸血鬼という設定は中々新鮮で面白い。
吸血鬼というと創作物においては強者ポジションについていることが常ですが、弱点が多すぎるがゆえに
そこを突かれて打倒されるのが毎度のお約束と、結構不憫な扱いを受けている存在。
しかし、この作品の舞台となっている異世界は吸血鬼が存在していないため、弱点は周知されていない。
つまりは無双できる環境が整っているわけで、それを知った主人公が暴れ回るのは必然なわけです。
とはいえ、魔王を筆頭とした脅威なども存在しているため、イージーモードとはいかないのですけどね。
ラブコメ面は今のところ、事実上二人のヒロインを囲っている(エロいこともしてる)状態ですが…
主人公は吸血鬼であることを隠してしがないサラリーマンをしていたが、ある日吸血鬼という種族が
存在しない異世界に召喚され、新たな世界で吸血鬼の名を広めようと奮闘することになった吸血鬼。
異世界では誰に対しても上から目線で尊大に振る舞っているが、社畜精神が染みついている。
色々考えているようでノリと勢いで動くことが多く、吸血鬼としての自信ゆえに油断慢心の塊。
元人間だが、倫理観はほぼ吸血鬼のものに染まっており、悪事も罪悪感なく平然と行うことができる。
元の世界での鬱屈ゆえに、自身が思い描く「理想の吸血鬼」になることが夢であり行動指針。
ヒロインは好奇心旺盛な神律士、人見知りな魔族娘。あと、謎の女神もヒロイン候補っぽい。
一番のお気に入りは家出して一人で古城に引きこもっていた魔王の娘、オルムネ・ザグラヴァーニ。
さらりとした長い銀髪、やや青白い肌、ピンと尖った耳、深く澄んだ紫色の瞳、あどけなさの残る美貌。
やや小柄な身長にはアンバランスな豊かさを誇る双丘。そして、頭左右からはえている角が特徴の美少女。
素直で親しくなった相手には人懐っこいが、人間嫌いかつ人見知りで、他者と目を合わせて話すのが苦手。
家出の原因は自分が周囲から「魔王の娘」としてしか見てもらえないことに耐えられなかったから。
自分を圧倒的な強さで打ち負かし、一人の女性として見てくれる主人公に子作りを望むほど惚れこんでいる。
現時点(一巻)においての評価はC。
人間味はあれどもあくまで吸血鬼、正義の味方ではない。しかし、だからこそ得られる爽快感が癖になります。
スペック的には間違いなく強者なのに、覇をとなえるための計画は杜撰すぎるわ、油断してばかりだわと
己の優位点を十全に活かせておらず、結果、自由気ままに暴れ回るだけになっている主人公ですが
まあ、元の世界では狩られることを恐れ、大人しく社畜をやっていたことを考えると仕方ないわけで。
本人は楽しそうですし、加えて女性には不自由しないのだから十分恵まれているんですけどね。
優位性を考えれば、わざわざ表に出ず大人しく酒池肉林しとけばいいのに、と思わなくもないのですが。
本筋は異世界で吸血鬼らしく生きる、という思想を前提に自由気ままに過ごす主人公ですが
複数いる魔王の思惑や、謎めいた言動をとる女神の存在など、一筋縄ではいかないようで…?