異世界、襲来   丈月城(MF文庫J)



突如現れたポータルから、異世界文明が人類への侵攻を開始し、ドラゴンが飛来し、大魔術師が襲撃する
世界へと変貌した現代社会を舞台にした、ヒーローVS異世界の革命的戦記。
エルフやドラゴンなどの異世界生物、ナノマシン、着装ヒーロー、侵攻してくる異世界との戦争。
と、厨二心をくすぐる要素がこれでもかと詰め込まれていますが、不思議ととっ散らかってはいません。
これは話の軸に敵に立ち向かうヒーロー! という王道の図式がシッカリと存在しているからでしょう。
終末世界を旅する主人公たちの姿も、重暗さの中に人間の力強さがあって臨場感に溢れていますし。
ラブコメ面はメインヒロインのアインが運命の相手認定で迫ってきていますが…?

主人公はナノマシン適性の高さから、国家プロジェクトの幼年従事者として中学生でありながら国防軍所轄の
ナノテクノロジー研究所に徴用された後、アスラフレーム「着装者三号」の操縦者として選ばれた少年。
年齢の割に聡明でこそあるものの、正義感は強いとはいえず、博愛主義者でもないと、ヒーローらしさには
やや欠けてはいるが、理不尽な不幸を見過ごせない、許せない意思の強さと熱さの持ち主。
異世界が襲来してくるまではサッカーでプロになるつもりで、近い将来実家を出ると思っていたので
栄養に気を遣い、工夫を凝らした料理を作れることをはじめとして、一通りの家事はこなせる。

ヒロインは凛々しきエルフ。サブにしっかり者なハーフエルフ、豪放磊落な元JK。
一番のお気に入りは母のクロエと共に三号フレームの覚醒実験に関わっているハーフエルフ、藤堂アリヤ。
亜麻色の髪に小柄な身体、エルフの血を引いていることがわかる先端の尖った耳が特徴の美少女。
聡明かつ責任感の強いしっかり者で、物腰・言葉遣い共に丁寧だが、年上に妙なあだ名をつけたり
ぼそりと毒舌を吐いたりすることがあったりと、清楚そうに見えて根は中々にイイ性格をしている。

現時点(三巻)においての評価はC。
物語開始時点では現代社会側が崩壊状態なだけに、ヒーロー出現からの活躍によるカタルシスがたまりません。
特撮ものとロボットものが融合した感じの戦闘シーンも浪漫全開で格好いいですし、孤独な戦いではなく
仲間たちとの絆、そして協力がシッカリ描かれていたりと「皆がヒーロー」になっているのがグッド。
キャラに関しては、クレバーで強かと、王道ヒーローというよりはそのライバルポジションにいそうな感じの
主人公が中々に印象的。絶望的な状況の中でも覚悟はバッチリ決まっていて心の強さが見て取れますし。
メインヒロインのアインをはじめとした仲間たちも、運命共同体の仲間としてそれぞれ頼もしくてグッド。
本筋は敵幹部の攻撃である流星群落としを最小限の被害で食い止めるも、仲間と離れ離れになってしまい…?