隣の女のおかげでいつの間にか大学生活が楽しくなっていた
                                             エパンテリアス(角川スニーカー文庫)



ぼっちな大学生と華やかな美女が紡ぐ、心温まる歩み寄りの物語。
大学を舞台にした青春物語ですね。学内での日常風景や授業の様子もシッカリと描かれており
二十歳を超え、大人になりたてといった感じの男女が織りなす落ち着いた交流と恋模様が楽しめます。
高校生以下の少年少女たちが持つ、若者らしい純粋で真っ直ぐなエネルギーや勢いはないですし
メインヒロインである伊藤奈月との出会いからして「講義の席が隣だった」というだけの地味さではありますが
その些細さこそが良いというか、踏み込み過ぎない関係性がじれったくて、同時にニヤニヤできます。
ラブコメ面は今のところメインヒロインの伊藤奈月が圧倒的リードですが、他ヒロインの巻き返しや如何に。

主人公は隣の席に突然現れた美女・伊藤奈月の存在によって人生が少しずつ色付き始めた大学三年生の青年。
対人関係に疎く、余計なことを言って他人との空気を悪くしがちとコミュ障であり、大学でもぼっち。
大学に入る前も目つきが悪く陰キャだったため、常に青春時代はシンプルに怖い人扱いだった。
面倒見がよく思いやりがある性格で、対象を問わず命というものに対して最大限の経緯を払っており
周りの人にどう思われてもその対象を思いやり、最善の行動を尽くすということを貫く優しさの持ち主だが
過去のトラウマから、自分のミスを気にしすぎる、繊細で臆病なところがある。
自分の部屋は絶望的に汚いが、他人のものは徹底的に丁寧に綺麗に慎重に扱う主義。

ヒロインは感情豊かな同期生、内気な同期生。サブに読めない幼馴染なども。
一番のお気に入りは実習で主人公とペアになったことが切欠で交流を持つようになった同期生、神崎夏帆。
中学生と言われてもバレないかもしれない低身長と、明るい茶髪が印象的な可愛らしい美人。
心優しく落ち着いていて物静かと内気な性格。男性に対する警戒心が強いが、主人公のことは信頼しており
彼に対しては可愛げのあるSっ気を出すこともあったりと、お茶目な一面も。
物わかりがよく、一回理解すればしっかりできる優等生で、実際大抵の科目をSかAで通ってきている。

現時点(一巻)においての評価はC。
主人公が典型的な陰キャでぼっちな大学生であるため、嫌な意味でのリアルな大学生活が覗けます。
まあ、ヒロインたちと親しくなってからは恵まれた日常をおくるリア充にしか見えなくなるのですが
不器用ながらも、相手にはきちんと伝わる優しさを持つ彼が好かれるのは十分納得できるので無問題。
ヒロインたちと親しくなっていく過程も、多少のご都合主義こそあれど丁寧に描かれていますしね。
コメディ要素は薄く、淡々と日常が過ぎていく作風ですが、じんわりとした暖かみのある読み味がグッド。
本筋は日々の交流を積み重ねていくことによって徐々に、しかし確実に距離を縮めていく主人公と奈月ですが
もう一人のヒロインである夏帆や過去に主人公を振った幼馴染の梨花の存在も気になるところ。