閃弾の天魔穹   早矢塚かつや(一迅社文庫)



伝説の弓を手にした少年が、仲間と共にまだ見ぬ空を目指す物語。
魔法文明世界で繰り広げられる、ファンタジー冒険譚ものですね。
壮大なバックグラウンド、厨二病をくすぐる設定の数々、活き活きとしたキャラクターたち。
と、全体的にバランスの取れている作品かと。
主人公が弓使いというのが「魔弾の王と戦姫」に似ていますが、あちらが集団戦闘メインなのに対し
こちらは個人戦闘及びパーティーバトルがメインになっています。

主人公は国に奪われた妹を取り戻すために力を求め、闘弓士を目指す少年。
地方領主の息子であり、お付のメイドもいるそれなりのお坊ちゃん。
妹が王の側室として無理やり嫁がされており、彼女を取り戻すことが人生の目標。
威勢はいいが、基本的に口だけであり、実が伴わないことが多い。
しかし、迷いや葛藤こそ多分に抱くものの、決断を下した時の集中力は流石主人公といったレベル。
弓使いとしては、動体射的は百発百中の凄腕なのだが、静物射的はからっきしなため落ちこぼれに属する。
伝説の武具である十二の天魔穹のひとつ「閃弾の人馬穹」を扱う才がある。
ただし、副作用として使用後は異常な性衝動に突き動かされてしまう。それなんてエロゲ。

ヒロインは才媛の王女、紅の矢精霊、献身的なメイド。
一巻の時点でヒロイン全員から好かれ、ほぼハーレムが完成している。
そのため、ヒロイン増加は難しい?
一番のお気に入りは主人公のメイド、クレット=ルット。
幼少期から主人公に仕えていて、その忠誠心と愛情は並々ならぬものがある。
それはもはや、肉体関係すらバッチ来いなレベルで。
しかし普段は感情の読めない表情で、歯に衣を着せない容赦ない物言い。
そして明らかにからかいを主目的とした態度で接しているため、とてもそうは見えない。
何気にメイドとしての、そして弓使いとしての能力はかなり高かったりする。

現時点(一巻)においての評価はC。
最終目標が妹の奪還という設定ではあるが、そのためには国家転覆レベルの事をなさないといけない。
という前提条件があるため、これからどういう展開になっていくかが気になるところ。
現時点での主人公の実力と環境ではどう考えても詰みゲーだし、どうなることやら。
国家間の暗闘がキナくさかったり、未登場の天魔穹の使い手など、伏線も多大。
果たして風呂敷は畳めるのか、やや心配ではあります。
ラブコメ的には、一巻の時点でプロポーズやら3(ぴー)の予約やら、飛ばしすぎだったりしますが。
だがそれがいい。むしろもっとやれ。