そして黄昏の終末世界   樋辻臥命(オーバーラップ文庫)



約束された世界の「終わり」を終わらせる少年の現代異能バトルファンタジーストーリー。
予言された終末、終末の要因である魔の空間にして現象「刻の黄昏」、その内部に現れる魔人「ペイガン」
そして終末に対抗できる武器「サクラメント」を使う人類側の対抗組織と設定は厨二感満載。
また、主人公が単なる巻き込まれ型の素人スタートタイプに見せかけて、実は別枠の非日常側に所属する者。
その実力も色々制限や事情こそあるものの、歴戦の騎士であるという意外性のある格好良さが素敵。
まあ、全力全開で戦えない状況ばかりなのは緊迫感こそあれど、もどかしさも覚えてしまうのですが。
ラブコメ面はメインヒロインの如月御姫と主人公の一蓮托生状態を考えると、彼女の一強?
主人公に好意を抱く女の子は他にもいますが、現状割り込めるだけの力はないようですし…

主人公はとあるきっかけから「刻の黄昏」に迷い込んでしまい、否応なしに非日常に引き込まれてしまった
赤髪赤瞳、常に閉じられている右目に秘密を隠している峰上学園に通う高校二年生の少年。
温和で冷静、落ち着きがあり、いつも飄々として肝も据わっているが、鉄火場では厳粛で容赦がない。
逃げず、顔を背けず、困難において戦い、誰かの盾となって死ぬべき、という騎士道を胸に刻んでいる。
色恋にはあまり興味がなく、自分に向けられる好意にも鈍感。ただし性欲は一応ある。
端正な顔立ちをしているのだが、よくつるむ友人がバカばっかりあるため女子からの評価は低い。

ヒロインはクールなポンコツ才媛、内気な級友、一匹狼な男装娘。
一番のお気に入りは強引に言い寄られているところを主人公(+友人)が助けることで仲良くなった級友、香川希。
右の横髪だけ長く伸ばして先を結わえた片側おさげの黒髪に栗色の、小動物を思わせる美少女。
控えめな日本人の少女という評価がピッタリ合うような大人しい気質で、弓道部ゆえに立ち振る舞いが整っている。
その一方で、意外にマイペースなところがあり、また、自分の恋路のこととなると自己主張が強くなる一面も。

現時点(二巻)においての評価はC。
練り込まれた世界観、一筋縄ではいかない背景を持つ主要キャラクターたち、物語を彩る数々の謎。
と、とにかく情報量が多く、読み応えこそあるものの、同時に読み込みにカロリーがかかる印象の作品。
シリアスパートと日常パートのバランスがとれており、緩急が利いてるため読み易くはあるのですが。
キャラに関しては、冷静かつ飄々としていながらも胸の奥に狂気に似た執念を抱く主人公の存在感が抜群。
メインヒロインの如月御姫にしても、内面と外面のギャップが親しみやすい愛嬌を生み出していますし
彼らの脇を固める味方サイドの面々もそれぞれの立ち位置でしっかりと自己主張しているのがいいですね。
本筋は果たすべき復讐、魔人の暗躍、正体不明の観測者、主人公たちを狙う人間の集団、二十三時間になった一日。
と、とにかく謎が盛りだくさんな上に決着までが長い目的もあったりと、当分は息をつく暇もなさそう。