お前らどれだけ俺のこと好きだったんだよ!   明月千里(GA文庫)



恋愛に疎すぎる才女たちとの駆け引き、すなわち「告白待ちバトル」なラブコメストーリー。
失って初めて気がつく恋心。よくあるフレーズですが、ヒロインたちは皆この心境からのスタートとなります。
まあ、その失った相手(主人公のこと)は一週間で恋人に振られて手の届くところに戻ってくるわけですが。
普通に考えればこの状況、ヒロイン側の大チャンスなのですが、すんなりことが進まないのがこの作品の面白さ。
才女ゆえに恋愛経験と知識に疎いため、攻めではなく受け身、つまり主人公のほうから告白させる。
という大悪手を選んでしまうんですね。読者視点だと、主人公は彼女たちに満更でもないとわかっているため
ヒロイン側から告白すれば大勝利確定だとわかっているわけで……これは酷いw
ラブコメ面は主人公もヒロインたちもお互いが様子見ないしは告白待ちという膠着状態ですが、さて。

主人公は初めての恋人に僅か一週間で振られてしまった高校二年生の少年。
小学生時代、好きな子に陰口を叩かれていたところを聞いてしまったトラウマから、処世術として
中間層である真面目系さわやかキャラを演じるようになり、容姿や身だしなみに気を付け
他者とは距離をとりつつも見くびられない立ち位置を堅持しているが、内面は根暗でビビリな陰キャ。
その一方で、いざという時には譲らない、自分の正しさを貫ける強さの持ち主でもある。
母子家庭で母は朝早くから夕方まで仕事であるため、夕食以外の家事は自分がこなしている。

ヒロインは完璧後輩お嬢様、馴れ馴れしい年上幼馴染、マイペースな級友。
一番のお気に入りは主人公のバイト先の喫茶店のマスターの娘にしてクラスメイト、櫛水乃愛。
濃紺の黒髪ショートカット、半目でアンニュイな顔つきが特徴的なスレンダー(というか華奢)美少女。
プログラムの天才で、色んなSNS用のアプリを開発して、多額の不労所得を得ている。
病的なまでの人見知り、協調性ゼロの擬人化とも言うべき性格。無口で口を開いても声は虚無的で気怠げと
抑揚がなく、その上虚弱だが主張が強く、自分のルールを曲げずに人に押し付ける唯我独尊人間。
しかし、決めたら己のルールを守る性分であり、自身の生き方を貫くための努力は欠かさない。
また、自分本位の塊のようで、捨て猫の飼い主探しのために特設サイトを作ったりと性根は心優しかったりも。
行動を自分以外の何かに委ねて理由付けすることが好きではなく、建前めいた行動を何より嫌っている。

現時点(一巻)においての評価はC。
主人公もヒロインたちもそれぞれの事情があっての「告白待ち」であるがゆえに膠着状態から話が進まない。
という、なんとも馬鹿馬鹿しくももどかしく、そしてニヤニヤできる構図がたまらなく愉快でグッド。
と言っても、主人公の気持ちはわかるんですよね。初めてできた恋人に僅か一週間で振られるとか
過去のトラウマも併せて警戒心全開になっても仕方ないですし、自分からいけなくなるのも理解できます。
だからこそ、ヒロイン側の残念過ぎるクソザコ恋愛脳っぷりが際立つわけですが。
失恋ショックを味わったというのに、何故二度目がないと油断して受け身になってしまうのか…
本筋は主人公へ好意を抱くヒロインたちが一堂に会し、次巻からは恋愛バトルが本格的にスタート?
主人公をアッサリ振った上、無神経な言動を見せる生徒会長の真意も気になるところ。