城なし城主の英雄譚   阿樹翔(GA文庫)



攻城戦から始める、勢いだけで組みはじめた少年と少女の剣と魔法のお気楽英雄譚。
クランを設立し、まるでダンジョンのようになった古代の軍事遺産=古城を探索・攻略し、獲得することが
目的として掲げられている、ファンタジーな世界観ならではの浪漫溢れる冒険物語です。
主人公やヒロインは勿論、友人となる面々や対峙するライバルたちは皆破天荒ながらも一本筋が通っていて
それぞれが持つ矜持が見ていて気持ちが良いですし、肝心の攻城戦における戦闘描写も中々に熱い。
ラブコメ面は主人公がハーレムを目指しており、フラグも順調に建築中ですが…?

主人公はモンスターが跋扈する遺跡・古城を攻略し、所有する「クラン」の設立を夢見る駆け出しの少年剣士。
真面目で定めた目標に真っ直ぐな性格で、物言いも素直なところがあり、誇り高く向上心が強いが
決して向こう見ずというわけではなく、良く言えば現実的、悪く言えば小狡くセコイ一面も。
剣の腕前は人並み以上で、イザという時の発想力にも優れているが、どこか自分に自信がない。
クランのハーレム化を口にしているが、実のところ色恋沙汰の経験はなく、女性には初心だったりする。

ヒロインはノーコン天才魔導士、チョロい竜人姫、真面目な付き人竜人、戦闘狂な鬼人剣士、妖艶な竜人。
一番のお気に入りはたった二人で大型古城を攻略した街の有名人な竜人の姫、オリヴィア・リッペンドロップ。
長いストレートの白銀色の髪に大人っぽい顔立ち、髪と同じような色のドレスが目を惹く見目麗しい美少女。
物静かでおっとりとし、偉ぶらず謙虚な性格で、竜人の姫だけあって一挙一動が品格に満ち溢れているが
その一方で根は快活であり、城主として己に利のない挑戦を受けて立つ高潔さの持ち主でもある。
自分を事故から助け、コンプレックスである髪色を褒めてくれた主人公に一目惚れをし、舞い上がったり
英雄色を好む、とハーレムを容認したり、色恋に関してはチョロく、頭がお花畑になりがち。
宝石細工が趣味で、出来上がった品は商会に卸している。好物は果物。料理が苦手(というかセンス皆無)。

現時点(二巻)においての評価はC。
ファンタジー作品においては当たり前のように出てくる建造物「城」がピックアップされている本作ですが
タイトルやあらすじを見た際に抱いた印象ほど城という要素が目立っているわけではないですね。
あくまで話を構成する一要素でしかなく、核ではない。まあ、それが足を引っ張っているわけではないのですが。
キャラに関しては、夢に真っ直ぐで器がデカく、クランをハーレムにしたいと公言する割にがっついておらず
初々しくありながらも青臭いだけではなく、小器用さやセコいところも持っている主人公が好感度抜群。
そんな彼と接し、心を許したり、将来性を認めることになる面々も個性豊かで魅力に溢れています。
本筋は主人公がその特異性ゆえに実力で古城を攻略することができても所有はできないという
無理ゲー状態であることを遂に認識し、城主になるために改善へと向けて動きだしましたが、さて。