禁忌異能者の訳あり学園生活 百瀬ヨルカ(HJ文庫)
夢を叶えるためにパートナーと補い合う、落ちこぼれ二人の学園バトルファンタジーストーリー。
大枠としては現代日本を舞台にした学園異能バトルものですね。人を襲う未知の化け物が敵として存在し
それを討伐するための人類の戦士として異能士がいる、というわかりやすい設定になっています。
また、タイトル通り主人公には訳あって十全に実力を発揮できないという縛りがあり、彼の相棒である精霊も
欠陥持ちであるため周囲からは落ちこぼれ扱いを受けている、という底辺スタートになっており
スマートな爽快感こそないものの、泥臭く這い上がっていく熱さが目を惹く作品に仕上がっているかと。
ラブコメ面は黒髪美少女ヤンデレ精霊一筋な主人公を他ヒロインがどう攻略していくのか。
主人公は神霊と組んで心を通わせ、未知の化け物「喰霊」を討伐する異能士を養成する学園の新入生。
とある理由から自らの異能を封印中で、コンビの炎妖精リリアスと合わせて落ちこぼれコンビと認定されている。
普段は飄々としているが幼い頃に出会い一目惚れした「黒髪美少女ヤンデレ精霊」が絡んだ時だけは暴走する。
頑固な性格で、こうと決めたら他者が何をしようが無駄で、直球と変化球を手当たり次第に取り混ぜ
一切の制止を掻い潜って荒唐無稽なその目的を果たしてしまう、とてつもない諦めの悪さの持ち主。
色恋に関しては、黒髪美少女ヤンデレ精霊一筋であるがゆえにそれ以外の威勢からの好意には鈍感。
文系科目は得意だが、本能が拒絶するレベルで理系科目のセンスが壊滅的。
ヒロインは明るく前向きな炎精霊、エリートな幼馴染、自称嫁な後輩、ヤンデレな樹木精霊。
一番のお気に入りは学園に在籍する史上最年少の上級異能士である幼馴染、禍ツ原あきら。
四大門閥のひとつにして戦闘面における最強、千年以上続く「禍ツ原家」の宗家の跡取り娘で
赤銅色の長髪に美しいアーモンド形をした琥珀の瞳の、すらりとした丈高い美少女。
文武両道、眉目秀麗を地で行く、曲がったことが嫌いな堅物優等生で、いつも超然と構えているが
実は死ぬほどプライドが高く、負けず嫌いであり、才能に負けない気概を持つ努力家でもある。
また、幼馴染である主人公の前でだけでは、感情を露わにしてしまうこともしばしば。何気に策士。
現時点(一巻)においての評価はC。
互いに足りないものを補い合い、夢を叶えるために奮闘する主人公コンビの輝きは申し分なし。
周囲から認められずとも折れず曲がらず己を貫いていく様は正しく物語の主役としての魅力に溢れています。
ヒロインたちも、彼にはまっすぐ見つめ続けている女性がいるとわかっていて、その上で自身の恋心を諦めず
絶対に振り向かせて見せる! と心の強さのある良い女っぷりを見せてくれるところがグッド。
ただ、前置き不十分なまま話がサクサク進みすぎるため、若干感情移入しにくいのが難点でしょうか。
本筋は宿願を果たすため奮闘する主人公コンビですが、反体制派の暗躍、門閥からの蔑視。
周囲にバレたらアウトな主人公の異能、そして、いきなりの再会となった宿願の君と前途は多難。