翠竜のティリストリ   寺田とものり(LINE文庫エッジ)



揺りかごの街を舞台にした、世界の化身たる美しき竜姫たちのバトルロイヤルストーリー。
ドラゴンの力を持つ者同士の戦いが話の主軸になっているだけあってバトルシーンはかなりド派手。
平和な田舎町という狭い世界の中で世界の行く末を賭けた戦いを! というギャップにもワクワクします。
ただ、主人公の力は守りであるためどうしても派手な活躍ができず、存在感が薄くなっている感も。
設定を考えると事実上主人公=景品と言っても過言ではないので仕方なくはあるのですが…
ラブコメ面は現状、実質的に四人のヒロインに囲われたハーレム状態であり、その上主人公の背景上
最終的に一人を選んで二人きりで幸せに、はほぼ不可能と言ってよいことからハーレムエンドが期待できそう。

主人公はある日あらわれた小麦色の少女との出会いで平穏だった生活が一変してしまった少年。
首に巻きっぱなしにしている、姉と幼馴染が半分ずつを編んだマフラーがトレードマーク。
良く言えば大らかで平穏を愛するのんびりとした、悪く言えば覇気と目的意識のない性格をしており
なにもないのが一番、という薄ぼんやりとした信念を胸に抱いて日々を生きている。

ヒロインは寡黙な小麦色娘、過保護な義姉、清楚な幼馴染、クールな転校生。
一番のお気に入りは主人公の一つ年上で学校の生徒会長を務めている幼なじみ、九頭竜香梨名。
珠のように艶めく長い黒髪に、女の子としては長身の細く均整の取れた体つきの古風で和風な美少女。
年下相手でも丁寧語で喋る真面目で完璧主義な性格のしっかり者で、器量も賢さも申し分ないのだが
大好きな主人公に対しては好意を隠さず口にしたり、スキンシップに躊躇がなかったり、嫉妬心が強かったりと
己の恋心が絡むと残念化してしまい、そのせいで彼を困惑させることもしばしばだったりする。

現時点(一巻)においての評価はC。
竜姫たちの戦争における勝利者の夫になるべき存在として狙われる立場である上、義姉、幼馴染、初恋の人が
全員竜姫だったとか、物語の主役の宿名とはいえ、色々盛られまくり過ぎではなかろうかこの主人公…
まあ、良くも悪くもおおらかなキャラをしているがゆえに妙な安定感はありますが。本人は戦えないけれども。
一方、そんな彼を取り巻くヒロイン陣は竜の力を持っているだけあって皆癖の強さに加えて余裕ありまくりですが
だからこそ主人公への好意を隠すつもりがないところがストレートに可愛らしいですね。
本筋は真竜戦争に巻き込まれたことで自分にまつわる事情を知った主人公ですが、今後も次々とその身柄を狙って
竜姫が襲来すると考えると、字面だけ見れば美少女たちにモテモテのはずなのに全然羨ましくない…