スパイ教室   竹町(富士見ファンタジア文庫)



世界最強のスパイにより、世界最高の騙しあいが描かれる、痛快スパイファンタジー。
大枠としては教官ものですね。現代日本で特殊だったり難ありだったりな生徒たち相手に教師を、あるいは
あるいは剣と魔法のファンタジー世界で戦闘や魔法の教導を、というよく見かける設定ではなく
各国がスパイによる「影の戦争」を繰り広げているという世界観の中、死亡率九割を超える「不可能任務」に
挑む機関を舞台に、凄腕スパイな主人公が実践経験のないヒロインたちを任務達成へと導いていく。
そしてテーマは「騙しあい」という異質極まりなく、斬新な設定が目を惹きます。
ラブコメ面は主人公に恋心を向けるグレーテの想いが受け入れられる可能性が出てきた模様。

主人公は任務成功率100%、しかし性格に難ありの凄腕スパイである青年。
死亡率九割を超える「不可能任務」に挑む機関「灯」を創設し、七人の少女を選出した。
外見は肩近くまで伸びた髪、色白の肌、贅肉をそぎ落とした細い長身、と一切の無駄を排除した美しさを持つ。
マイペースな性格で、世界最強のスパイの肩書きに恥じぬ実力を有しているが、かなりの変わり者であり
普段の涼し気な態度に反して超絶口下手で対人関係に不器用であるため、致命的なまでに教え下手。
弱点は孤児出身だったことからか、身内に甘く、仲間を思いすぎ、絶対に見捨てられないこと。
機械のように冷たい印象があるが、存外に多趣味でチェス、料理、水墨画と取り組んでいる。
家族愛優先で性愛を欲しておらず、性欲も薄いため、今まで恋愛感情を抱いたことがない。

ヒロインは世間知らずな「花園」、静淑な「愛娘」、正義感強き「百鬼」、不遜な「氷刃」
優艶な「夢語」、気弱な「草原」、純真な「忘我」、不運な「愚人」
一番のお気に入りはある大物政治家の娘であるコードネーム「愛娘」ことグレーテ。
ボブカットの赤髪が特徴的な、すらりとした長身と余分な肉を持たない麗しい肢体の美少女。
物腰穏やかな性格で、いつも静淑な態度をとっており、口調もおしとやか。
極めて優秀な頭脳を誇っており、チームの参謀ポジションについているが、男性に対する嫌悪感が強い。
生まれた時からある、不気味に顔を覆う痣のせいで誰からも忌み嫌われ続けてきたがゆえに
世界でただ一人、自分の素顔を褒めてくれた主人公に恋心を抱き、絶大な愛情を寄せている。

現時点(十一巻)においての評価はC。
テーマが「騙しあい」というだけあって、叙述トリックなど、読者にも騙しが仕掛けられています。
そういう意味では推理小説を読むように神経を尖らせたり、読み返しが必要な作品だと言えるでしょう。
とはいえ、ラノベらしく美少女たちが和気藹々とコミュニケーションをしていたり、凄腕なのは確かだけれども
教え下手でボケ属性の主人公が存在感バッチリだったりと、コミカルさも十分なのでとっつきにくさはないです。
勿論、ヒロインたちの成長や任務パートもシッカリ描かれているので緩急のバランスもいいですしね。
本筋は革命に向けて遂に反撃を開始した「灯」。しかしその裏で、真の黒幕が蠢いており…?