一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた   
                                              月島秀一(富士見ファンタジア文庫)



最強の力を手にした落第剣士が世界へその名を轟かせる剣戟無双ファンタジーストーリー。
押した者は一億年もの間時の世界に囚われる呪われたアイテム「一億年ボタン」を何度も押して
十数億年もの修業の時間を手にした主人公が極限の剣技を手に入れ、無双するというのが大筋です。
主人公の強さの理由付けとしてはこれ以上ないですし、努力の結果手に入れた実力なので感慨もひとしお。
なのに、一巻に出てくるレベルの敵(しかも学生)にいきなり負けかけているのはタイトル詐欺なのでは…?
普通に突出した才能のほうが十数億年の努力より上って格付けが明確になってしまいましたし。
そもそも、一億年ボタンによる修業よりもピンチ時の覚醒のほうが成長率がいいという。結局才能かよと。
ラブコメ面は告白をしていないだけで、メインヒロインのリアと両想い状態ですが、さて。

主人公は一億年ボタンを連打して十数億年も修業した結果、極限の剣技を手に入れた落第剣士の少年。
落第剣士と蔑まれ続けてきたがゆえに自分に自信がないところこそあるものの、真面目で努力家な性格。
また、十数億年の孤独な修業を成し遂げるという、人間の域を超えた忍耐力の持ち主でもある。
剣を振るうことが好きだが好戦的というわけではなく、基本的には温厚。ただし母親への侮辱は許さない。
幼少期は過疎化と高齢化の激しい村で生活し、その後は進学した剣術学院でつらい学生時代を
おくってきたことから異性と触れ合う機会がまるでなかったため、異性に対する免疫がなく、純情。

ヒロインは猫かぶりな王女、クールな同級生、負けず嫌いな生徒会長。
昇格候補にツンツン男装娘や腹黒天子なども。
一番のお気に入りは一子相伝の秘剣「桜華一刀流」の正当継承者、ローズ=バレンシア。
賞金稼ぎをしていたが、剣武祭で主人公と対戦し、敗北したことを切欠に千刃学院に入学した。
赤い瞳に整った顔立ち、背中まで伸びるピンクがかった美しい銀髪、そしてスレンダーな体躯の美少女。
クールで大人びており、とっつきにくい雰囲気があるが、女の子らしい面も持ち合わせている。
朝に弱く、寝起きはアホ毛がピンと立っている上に長い髪が四方八方へ跳ねているなど凛とした面影はない。

現時点(十巻)においての評価はD。
極限の努力の果てに頂へと昇り、蔑んでいた周囲を見返す落第剣士。こういう構図は大好物です。
まあ、色々ツッコミどころも多いですが、主人公が己の実力で無双して報われていくのは一応確かではあるので
細かいことを気にせず、一人の少年が剣技一本で道を切り開いていく英雄譚を楽しむのが吉。
対峙する敵は主人公を見下してくる不快なキャラが多いので、勝利時のカタルシスも申し分ないですし。
ただ、努力が勝利要因になっているのは序盤だけで、後はほとんど覚醒頼りというのは本末転倒な気が。
本筋は学校対抗戦の最中に起きた敵国からの襲撃を何とか退けた主人公に、後輩からまさかの問いかけが。