結婚が前提のラブコメ 栗ノ原草介(ガガガ文庫)
笑いと涙、葛藤と希望が満ちている、絶対結婚したい系婚活ラブコメストーリー。
大枠としてはお仕事ものですね。仕事場が結婚相談所で婚活がメインテーマというのは初見ではありますが。
テーマがテーマなので当然登場するヒロインは皆成人していますし、皆何らかの問題を抱えています。
そんな彼女たちを結婚までサポートするのが主人公の仕事であり、話の核となっているわけですね。
ただ、ラブコメものとしては少々変則と言わざるを得ないかと。主人公とヒロインが恋愛するのではなく
主人公はあくまで婚活サポート役。自身が結婚相手に、というのは基本考えにないですし。
とか思っていたら、話が進むうちにあれよこれよとフラグが立ち、主人公も婚活の当事者になるという不思議。
ラストは結婚相談所連合会会長に就任し、ライバル会社との提携で仲人業界の変革を軟着陸させた主人公。
そして数年後、また一人結婚が前提のラブコメをするヒロインが誕生するのだったエンド。
ラブコメ的にはメインヒロインの水無月結衣と幸せな結婚をして終了。
主人公は婚活女子のサポートに奔走する、結婚できない人を結婚させる結婚相談所のプロ仲人。
良くも悪くも真面目で直情的な性格で、顧客には親身でお節介、暑苦しいところがあり
自分の色恋にうつつを抜かしながら仲人の仕事に挑むのは不真面目不謹慎ではないか、という考え方。
また、自分の色恋には奥手であり、大学時代は女の子をデートに誘うのも一苦労だった。非童貞。
和風っぽい場所が好きで、落語や歌舞伎が好きという若者らしさに欠けた趣味を持っている。怖いものが苦手。
ヒロインは女子高生趣味の元科学者、玉の輿狙いの元令嬢、言動不穏なエロ漫画家、ダメンズほいほい保育士。
一番のお気に入りは玉の輿を狙う元令嬢(現貧乏人なアルバイター)早乙女カレン。
金髪碧眼の、外国人モデルさながらにすらっとしたスタイルをしている美人。
元々は貴族の血を引く名門・早乙女家の令嬢として生を受け、メイドと一緒にお屋敷で暮らしていたのだが
十歳の時に母体である会社が倒産してしまい、家は没落。現在は下町の格安木造アパートで暮らしている。
玉の輿だの金が欲しいだの言っているが根は誠実な性格で、金のためにズルいことをしたことはない。
苦労してきたからか姉さん女房気質&姉御肌で、よく気が回り、料理の腕も申し分なしと嫁としては優良物件。
元貴族のプライドがそういうことを拒絶しているのか、エロが苦手。
評価はC。
婚活がテーマとなってはいますが、婚活を描く上でのストレス要素であるリアルな厳しさや過酷さの描写は薄め。
顧客に幸せな結婚をしてもらいたい! という人情が前面に押し出されているので読み易かったです。
結婚相談所ってどんなことをしてるの? という疑問の答えがわかりやすく描かれているのも良かったですしね。
キャラに関しては、誠実に顧客一人一人にきちんと向き合って奮闘する主人公が好感度高め。
ヒロインたちは美人ではあるものの、それぞれ癖があるせいで結婚できないところが笑えるやら不憫やら…
本筋は婚活がテーマになっている作品なだけあって、当然物語の締めは幸せな結婚なわけで
それ自体は予定調和だったわけですが、最後の婚活の障害である主人公の「相手を幸せにできない」に対する
メインヒロイン・結衣のアンサー「私はもう、幸せよ」は実に素敵で秀逸な殺し文句だったかと。
正直私はもう一人のヒロイン・カレン推しだったので残念な結果ではありましたが、これには納得せざるをえない。