異能バトルは日常系のなかで 望公太(GA文庫)
壮大なる学園異能バトルにならない異能力者たちの日常系コメディ。
侵略者も悪の組織もいない世界で、異能に目覚めた主人公たちが能力を無駄遣いしながら過ごす話です。
基本的にはトーク系部活コメディと言い切って差し支えないかと。
一応、物語の裏側で幻想の存在を含めた異能力者同士の戦争をやっているようですが…
本格的にそっちの事情が主人公たち関わってくるのは最後の最後なので基本的にスルーで問題なし。
ラストは厨二病な物語を完成させ、彼らは二度とない今を歩いていくのだったエンド。
ラブコメ的にはヒロインは明言されず、誰と恋人になったのかを伏せる形で終了。
主人公はある日突然異能に目覚めた高校二年生の少年。
目覚めた能力は湯たんぽ程度の温度の黒い炎を出すことができる「黒焔(ダークアンドダーク)」
まごうことなき厨二病患者。特別な俺格好いい。罪深い俺格好いいを好み、常に言動に反映させている。
ただ、それなりにTPOはわきまえているし、怖そうな人の前では大人しくしていたりと小物臭バリバリ。
また、熱しやすく冷めやすい性格でもある。しかし、異常な事態には強く、意外と頼りになるところも。
学力はそれなりで、素行もまともと、意外にも学生としては優秀だったりする。
ヒロインは、隠れオタク少女、小学四年生、ボケボケ幼馴染、完璧キャラな文芸部部長、チョロイ生徒会長。
一番のお気に入りはキャラ崩壊が激しい生徒会長、工藤美玲。
成績優秀、スポーツ万能、抜群のリーダーシップを持っていて、しかも人格者。
更には会長選挙においても圧倒的な得票で当選と、人望も凄い。
普段は生真面目な堅物であり、口調も堅く物事をハッキリ言うのでとっつきにくい印象があるのだが
勘違いからの恋愛で自分を見失ってしまったりと、思い込みの激しい一面も持っている。
決して悪い人間ではないものの、一言で言えば、頭の良い馬鹿。
評価はC。
王道ではなく、あえて脇道を突き進む異端な日常性が個人的に好みの作品でした。特に台詞回しが楽しい。
キャラ同士の掛け合いは笑えましたし、意識的な厨二(ネタ)考察も興味深く読めました。
主要メンバーそれぞれの掘り下げもきちんと行われていたのでキャラへの感情移入も容易でしたし。
また、序盤こそラブコメ要素は薄かったものの、個別回をこなしてからのヒロインたちの恋する乙女具合は
実にニヤニヤできて素晴らしかったです。そういう意味ではヒロイン明言せずエンドは妥当だったのかも。
本筋は最後の最後までフィクションをメタり倒してのグダグダ感窮まる終わり方ではありましたが
だからこそこの作品に相応しいオチだったと納得できましたし、不思議と綺麗に纏まっていたのは凄い。