異世界帰りの俺(チートスキル保持)、ジャンル違いな超常バトルに巻き込まれたけれどワンパンで片付けて無事青春をおくりたい。   真代屋秀晃(電撃文庫)



異世界転生者の少年が、ヒロインをワンパンで助けまくりながら日常ラブコメを目指す物語。
現代日本を舞台にした異能力者同士の殺し合い、サイボーグの陰謀、退魔師と魔族の抗争など
ジャンル違いの戦いに異世界帰りでチートスキル持ちの主人公が介入、ワンパンで敵を倒して問題を片づけ
無理矢理日常に戻ろうとする。というのがこの話の基本骨子となっているわけですが…
とにかく主人公が苦労続きで不憫だなぁ、というのが正直な感想。彼は桁外れの戦闘力を持っているので
戦いとなれば不安はないのですが、結果として肝心の切望している日常は手に入らないという世の無情さよ。
ラブコメ面は本命である幼馴染の朝倉奈々子と接近できそうになるたびに邪魔が入ってしまう
というお約束を繰り返すうちに、他ヒロインにもどんどんフラグを立てていっている模様。

主人公は二年前、偶然にも剣と魔法の異世界に迷い込んでしまい、その後死にもの狂いでスキルを習得し
討伐すべき敵も倒し、やがて日本へ帰還するも、そこでも超常バトルに巻き込まれてしまった少年。
最後まで自分の意思を貫き、目標を達成するまでどんな苦境でも絶対に諦めない強さの持ち主。
異世界転移するまでは内気で引っ込み思案で無気力でコミュ障、友人も少なく存在感が皆無だったことから
周囲からは「空気王」というあだ名をつけられていたが、帰還後は日常を謳歌するために活発になった。
同時に、日常生活に固執するあまりに短絡的な行動をとったり注意力に欠けるところがあり
そこに真面目でお人よしな性格が加わって望まぬ厄介事を抱え込む羽目になるのがデフォルト。
異世界にて平穏な日常が大切なものだと痛感したがゆえに日常イベントにはテンションが上がりがち。

ヒロインはクールな同級生、天真爛漫なギャル、かまってちゃんな後輩、真面目優等生な幼なじみ。
一番のお気に入りは日本に留学中のハーフな文芸部部員、マリー=ルイセ・ファン・アストンクラウ。
その正体は退魔師の母と吸血鬼の父を両親に持つ「夜の一族」の末裔であるヴァンパイアハーフ。
小さな体、赤いリボンで纏めた綺麗な金髪、青い瞳と可愛い西洋人形といった感じの美少女。
日本にやってくるまでに過ごしていた父が統べる闇の領地では同世代と関わってこなかったため
主人公と出会うまでは友達の作り方がわからない、口の悪い天邪鬼なかまってちゃんなぼっちだった。
自分の孤独を救ってくれた主人公を慕っており、彼を婿入りさせて一族の領地にこさせようと考えている。

現時点(二巻)においての評価はC。
必死に頑張れば頑張るほどに幸せと平穏が遠のいていく主人公は南無の一言。
それでも彼が奮闘するからこそ、ヒロインたちは救われ、表向きの日常は守られるわけなんですけどね。
とはいえ「日常破壊駄目絶対!」という明確で共感しやすい主張のもと戦う彼の姿は爽快感抜群ですし
お互いに自分以外を一般人だと思い込んでいるヒロインたちの関係性も愉快でグッド。
この「自分だけが彼と特別な関係」という思い込みが読者からすると可愛くもあり爆笑ものでもあり…
本筋は破壊神の復活を阻止し一段落ですが、これで完結っぽくもあるので続きが出るのか気になるところ。