魔術学院を首席で卒業した俺が冒険者を始めるのは
そんなにおかしいだろうか 藍月要(ファミ通文庫)
実力派の少女冒険者もタジタジな凄腕魔術師のファンタジー冒険譚。
大枠としてはファンタジー世界を舞台にした、主人公がリーダーの冒険者パーティー活躍物語ですね。
あらすじやタイトルからは最強ものっぽい雰囲気が漂っていますが、主人公は優秀ではあるものの
突き抜けたチート能力や戦闘力を持っているというわけではなく、知識や有用性の高い魔術で立ち回る
メイン火力ではないけれどしっかりと地に足の着いたタイプだというのが目新しさもあって良い感じ。
ストーリー展開もゲームのようにわかりやすくサクサク進むので読み易いですし。
ラストは突如現れた国を滅ぼさんとする氷の魔神を国の精鋭、火竜、そして仲間たちと共に撃破。
その功績で英雄となった少年は、真の英雄に至る道を歩むべく次の冒険へと旅立つのだったエンド。
ラブコメ的には四人のヒロインと結ばれて終了。なお、彼女たちとは一生を共にした模様。
主人公は魔術学院を首席で卒業しながらもエリートの道を選ばず冒険者となった魔術師の少年。
外見は中肉長身で、周囲からは仏頂面をどうにかすればモテるのに、と言われるレベルのイケメン。
態度は不愛想で淡々としているが、真面目で思慮深く、慎重で研究熱心、強い理性の持ち主で
頭も回り、物事には軽々動じないなど、冒険者や参謀としてかなり優秀な素質を有している。
反面、安定した将来を蹴って冒険者という夢を追ったり、意識せずに女性を口説くような発言をしたり
ジョークにセンスがなかったりと、私人としてはかなりの変人。
異性に対する興味は人並にあるが、優先度があまり高くないがためにその様子があまり表に出ない。
ヒロインは猪突猛進な侍、愛らしいな獣人盗賊、理知的な神官、勝気な姫騎士。
ゲストヒロインとして快活なエルフ剣士や尊大な竜娘なども。
一番のお気に入りは主人公の幼馴染にして国の第一王女である姫騎士、アイリーン・グレイスロード。
輝くような銀髪のショートカットに、少年的な凛々しさと少女の華やかさを同居させた美貌。
そして、性別を秘しているわけでもないのにいつも男性的な衣服に身を包んでいるのが特徴の美少女。
明るく社交的で正義感があって行動力があり、王侯貴族でありながらも一人一人の人間のことを思える
優しさを持っているが、地頭は悪くないものの頭脳労働が苦手で細かい考え事は丸投げしがち。
また、感情が表に出やすい性格であるがゆえに隠し事が下手で自爆してしまうこともしばしば。
身体能力を強化する命気を半ば素質だけで使いこなす天才で、その強さは近衛騎士にひけを取らない。
評価はC。
思慮深く慎重で知識があり、能力や勢いに頼らず仲間たちと共にひとつひとつ目の前の困難を突破していく
主人公が安定感抜群で実に頼もしい。それでいて安定よりも夢を選ぶ破天荒さを併せ持っているのもグッド。
彼と共に戦うヒロインたちも、少々チョロい面が目立ちますが己の役割を果たす強さを持っていますし。
ただ、冷静すぎる主人公の気質ゆえか、割と淡々と話が進行するため盛り上がりには欠けていた感も。
本筋は四巻完結と短めながらも、冒険者物語における王道のイベントはキッチリおさえられていたため
読み応えは申し分なく、ワクワクもできました。欲を言えばもっと日常パートは欲しかったですが。