やがてうたわれる運命の、ぼくと殲姫の叛逆譚   藍月要(ファミ通文庫)



想いが世界を変える王道シンフォニック・ファンタジーストーリー。
ファンタジー世界を舞台に、魔物を相手にしたバトルと年の差ラブコメを主軸にしている作品ですね。
今まで女性しか確認されていない特別な力を、まがいものと蔑まれながらも男の身で得てしまう主人公。
この手の、世界の常識を覆す力を得た唯一の男である主人公が活躍する系の話は珍しくないですが
ヒロイン側も女性であるがゆえに男なら受けられる力の恩恵を受けることができないがため侮られている。
という、同じような境遇なのは中々に新鮮。正に割れ鍋に綴じ蓋といった感じで運命的なのがグッド。
ラブコメ面はメインヒロインのオルカ推しな感じでありつつも、事実上三姉妹ハーレム路線っぽい?

主人公は世界を旅して歌を作り、歌って生きることを夢見ながら酒場で働く十四歳の少年。
歌に対して狂気に近い想いを捧げており、才能と努力が合わさって歌い手としての評判はかなり高い。
物腰穏やかで礼儀正しく、気遣いができていつも仕事に一生懸命という真面目な性格だが
こうと決めたことにはとても頑固であり、自分に妥協を許さない、揺るがない芯の通った気高さの持ち主。

ヒロインはポンコツ系クールな長女、フランクな次女、マイペースな三女。
一番のお気に入りは女魔物狩りスクーデリア三姉妹の長女である大剣使い、オルカ。
最強の女魔物狩りとも噂される凄腕のゴツい大剣使いで「殲姫」の二つ名を持っている。
抜群のスタイルに瞳の傍の泣き黒子が色香を発している、編んだ金髪を艶やかなフルアップにまとめた美女。
普段はストイックで凛々しくクールだが、不慣れな色恋に関しては惚れた男を前にすると素直に気持ちを言えず
妙な態度になってしまい、それを後で後悔するなど超がつくレベルで不器用なヘタレ。

現時点(一巻)においての評価はC。
歌で力を強化することができる。しかし力の授け手は女性限定、受け手は男性限定というのが常識の世界で
主人公やヒロインたちの一途な想いが奇跡を起こし、常識を覆すという構成が実に綺麗ですしワクワクもします。
ラブコメとして見ると、メインヒロインとの年齢差からいわゆるおねショタものに当たるわけですが
年上なメインヒロインはポンコツ可愛く、年下である主人公は年齢相応ながらも強い信念を持っているなど
キャラ自体が魅力的でいかがわしさはないですし、脇を固める面子もしっかりとした存在感があるのがいいですね。
本筋は街の危機を救い、旅立つ主人公一行。と、ここで終わっても問題ない感じですが、さて。