ライアー・ライアー   久追遥希(MF文庫J)



嘘つきたちが放つ最強無敗の学園頭脳ゲームバトルストーリー。
学生同士がランクを決める決闘(ゲーム)を繰り広げる学園島が舞台になっていることからわかるように
数々のオリジナルゲームで頭脳バトルを繰り広げることが主旨となっている当作品なわけですが
物語開始時点で主人公が最強級の実力を持つことがほとんどなこの手のジャンルには珍しく
主人公個人の実力は少なくとも額面上は高くありません。なので嘘とイカサマで戦う形が主体です。
また、いきなり初戦で学園トップを奪取し、以降はその地位を守っていくという構成も目新しい。
ラストはラスボスに勝利し、その後に行われた昇格戦をクリアして前人未到の8ツ星となり
最強の嘘を真実へと変えた主人公は二年生へと進級し、新たな決闘を開始するのだったエンド。
ラブコメ的には初恋の幼馴染が判明するも、ヒロインレースは決着つかずで終了。

主人公は誤解と偶然の積み重ねから昨年度の絶対王者・彩園寺更紗を転校初日で陥落させ
学園島史上最速で頂点に君臨する7ツ星に成り上がり、その立場を守り続ける羽目になってしまった少年。
内心で抱えている感情と外に出す感情とを完全に切り離すことができ、そのため演技を得意としている。
学園島では王者としての立ち振る舞いが必要なため傲岸不遜唯我独尊なキャラを演じているが
素は気を許した相手にはガンガン本音が出てしまったりと、素直に感情を表す性格。
スペックだけ見ると学力は低いが、イカサマを手段として組み入れるなど、柔軟な思考力と発想力の持ち主。
学園島には幼い頃に離れ離れになった幼馴染の少女と再会するためにやってきた。

ヒロインは最強の偽お嬢様、クールなチートメイド、小悪魔な先輩、天才中二娘、生真面目な後輩。
マイペースな隠れ天才、ハイスペックお嬢様、ボクっ娘先輩、ドM&メスガキ姉妹。
一番のお気に入りは緋呂斗の補佐をするチーム「カンパニー」の長にして住み込みのメイド、姫路白雪。
肩の辺りで切り揃えられたさらさらの銀髪に、研磨された宝石のように澄んだ碧眼。
そして、どちらかといえば可愛いに属する顔立ちの守ってあげたくなるような雰囲気を持つ巨乳美少女。
基本的に涼やかな表情に加え、あまり感情の窺えない平坦な口調で喋るクールビューティーだが
ゲームが絡んだ時はSっ気を出したり、男慣れしていなかったり、想定外の事態に取り乱し弱気になったり
主人公に頼られたり気遣われると喜びを隠せなかったりと、内面は年齢相応に感情豊か。
プロ並の腕前を誇る料理技術を筆頭にメイドとしてのスペックは高く、ゲーム能力もランク四ツ星。

評価はC。
最弱なのに最強を演じ続けるがために、イカサマと嘘を武器に強敵たちと戦う主人公が格好いい。
目的をしっかりと見据えているがゆえに、手段を問わず勝ちを掴もうとする姿勢にブレがなかったですしね。
ヒロインたちはその可愛らしさが合間合間の清涼剤になっていましたし、協力者としての頼もしさもバッチリ。
また、作品の特性上説明描写が多くはあるものの、過不足なく理解しやすくなっているのも良かったです
本筋は救うべき人間を全員救い上げた上の勝利、完全無欠のハッピーエンドを掴み取っての完結と
これ以上ない綺麗な形での締めが素敵でした。ラストゲームが「幼馴染み探し」というのも上手かったかと。
とはいえ、ラブコメ面を投げっぱなしで終わらせたのは流石にどうかと思いましたが…
幼馴染の正体がヒロインレースの決定打にならないなら、何のために引っ張ったんだって話なわけで。